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性器ヘルペス感染症について

流行は?

 性器ヘルペス感染症は、単純ヘルペスウイルス( herpes simplex virus : HSV)によって起こされる性感染症(STD : sexually transmitted disease )です。単純ヘルペスウイルス( herpes simplex virus : HSV )には、1型( HSV-1 )と2型( HSV-2 )とがあり、性器ヘルペス感染症は、主として2型( HSV-2 )によって起こされます。

 アメリカ合衆国国内における単純ヘルペスウイルス2型( HSV-2 )の蔓延状況については、米国国民健康・栄養調査(NHANES; National Health and Nutrition Examination Survey)における血液検査(抗HSV-2抗体検査)によって把握されています。2005-2008年の米国国民健康・栄養調査(NHANES)で把握されたアメリカ合衆国国内における14-49歳の年齢層における単純ヘルペスウイルス2型( HSV-2 )の蔓延状況について、米国疾病管理・予防センター(CDC)が報告しています(参考文献1)。14-49歳の年齢層において16.2%がHSV-2に感染していました。HSV-2に感染していた人の81.1%は、これまでに性器ヘルペス感染症を医師等の医療専門家から指摘されたことがありませんでした。

 HSV-2による感染は、男性(11.5%)よりも女性(20.9%)で多く見られました(参考文献1)。これは、性交渉において接触する粘膜面の広さの違いから、女性から男性への感染よりは、男性から女性への感染の方が起こりやすいためと考えられます。2005-2008年のアメリカ合衆国の男女別年齢階層別HSV2感染率は、下の図1のとおりです(参考文献1)。

図1.(2005-2008年のアメリカ合衆国の男女別年齢階層別HSV2感染率)

 これまでの性交渉相手の累積数が多いほど、HSV-2による感染は、多く見られます。2005-2008年のアメリカ合衆国の男女別性交渉相手累積数階層別HSV2感染率は、下の図2のとおりです(参考文献1)。

図2.(2005-2008年のアメリカ合衆国の男女別性交渉相手累積数階層別HSV2感染率)

 アメリカ合衆国では、人種・民族間でHSV2感染率に差が見られます。2005-2008年のアメリカ合衆国の非ヒスパニックの白人、非ヒスパニックの黒人、メキシコ系アメリカ人では、女性ではそれぞれ15.9%、48.0%、13.2%と、男性でもそれぞれ8.7%、29.0%、7.5%と、非ヒスパニックの黒人でHSV2感染率が高いです(参考文献1)。

 「横浜市感染症発生動向調査における性器ヘルペス感染症の女性患者の年齢分布(2000年)」のグラフをご覧下さい(下線部をクリックしてください)。「淋菌感染症」や「性器クラミジア感染症」といった性感染症と比較して、高齢者の患者も見られることが特徴です。高齢者の場合には、以前から体内にいて休眠していたHSV-2が目覚めることにより性器ヘルペス感染症が再発して患者になっている場合が多いと考えられます。

どんな病気?

 性器ヘルペス感染症は、単純ヘルペスウイルス( herpes simplex virus : HSV )によって起こされる性感染症(STD : sexually transmitted disease : 性交渉によって感染する病気)です。単純ヘルペスウイルス( herpes simplex virus : HSV )には、1型( HSV-1 )と2型( HSV-2 )とがあります。1型( HSV-1 )は、主として、カゼや高熱のときに、口や唇に水疱(水ぶくれ)や潰瘍を生じます(口唇ヘルペス)。2型( HSV-2 )は、主として、性器の部分に水疱(水ぶくれ)や潰瘍を生じます(性器ヘルペス)。しかしながら、1型( HSV-1 )と2型( HSV-2 )とも、口唇に病変を起こす場合もあれば、性器に病変を起こす場合もあります。単純ヘルペスウイルス( herpes simplex virus : HSV )に感染していても、普段、大抵の場合において、1型( HSV-1 )と2型( HSV-2 )とも、休眠状態にあって静かにしていますので、何の症状もありません。しかし、ときとして、単純ヘルペスウイルス( herpes simplex virus : HSV )が休眠状態から活性化して、口唇あるいは性器に水疱(水ぶくれ)や潰瘍を生じます。単純ヘルペスウイルス( herpes simplex virus : HSV )は、一度感染すると、その人の生涯を通じて、体内で生き続けています。水疱(水ぶくれ)や潰瘍などの症状が沈静化して治ったように見えても、休眠状態の単純ヘルペスウイルス( herpes simplex virus : HSV )が体内に存在し続けているのです。

 1型( HSV-1 )と2型( HSV-2 )とも、病変を生じる粘膜と粘膜との直接の接触によって、他の人に感染します。キスを含めた性的接触により感染する場合もあれば、直接の接触はなくても、分泌物を介してウイルスが運ばれて感染する可能性もあります。

 単純ヘルペスウイルス( herpes simplex virus : HSV )に感染している人は、水疱(水ぶくれ)や潰瘍といった症状の有無に関係なく、他の人を感染させる可能性があります。自分が単純ヘルペスウイルス( herpes simplex virus : HSV )に感染していることに気づいていない人たちが、しばしば他の人を感染させます。また、自分が単純ヘルペスウイルス( herpes simplex virus : HSV )に感染していることに気づいていても、水疱(水ぶくれ)や潰瘍といった症状がないときでも他の人を感染させる可能性があることを知らない人たちが、しばしば他の人を感染させます。

 HSV-2が引き起こすのは、通常、軽い症状です。また、HSV-2に感染していても、多くの人たちで自覚症状がありません。ところが、一方で、HSV-2のために痛い陰部の潰瘍を何度も繰り返す成人が多くいます。特に、免疫が抑制された状態にある人たちでは、その症状は重症となります。また、HSV-2に感染したことで、大変に悩む人たちもいます。

 出産時に母親が産道にHSV-2を排出していると、赤ちゃんに致命的な感染を引き起こす可能性があります。妊娠中に母親がHSV-2に感染しないことが大切です。妊娠中に母親がHSV-2に初めて感染したような場合には、出産時に赤ちゃんを感染させてしまう可能性が高くなります。出産時に産道に性器ヘルペス感染症の病変が出現しているような場合には、帝王切開による出産を産婦人科医師が選択することがあります。

 アメリカ合衆国では、異性間でのHIV(エイズの病原体ウイルス)の感染に、HSV-2は大きな役割を果たしていると考えられています。性器ヘルペス感染症であるとHIVに感染しやすくなります(HSV-2に感染していると少なくとも2倍はHIVに感染しやすくなります)。また、HIV感染者の場合には、性器ヘルペス感染症であると、他の人を感染させやすくなります。

 HSV-2の起こす症状については、大変に個人差があります。HSV-2に感染しても多くの人は、感染したことに気づきません。しかし、初めて感染して症状が出た場合には、陰部の水疱(水ぶくれ)や潰瘍といったはっきりした症状が出ることがあります。初めて感染して症状が出る場合には、HSV-2に感染してから2週間以内に陰部の水疱(水ぶくれ)や潰瘍といった症状が出現し、その症状は2-4週間で消失します。インフルエンザのような症状や、発熱、リンパ節の腫脹が出現したりすることがあります。しかし、HSV-2に感染しても何の症状も出ない人もいます。また、気づかないほどの軽い症状であったり、虫刺されや単なる発疹と勘違いされてしまうこともあります。性器ヘルペス感染症の症状が出現する人たちでは、年に何回か(平均的には4回か5回)の、こういった症状の繰り返しがありえます。

 体内の単純ヘルペスウイルス( herpes simplex virus : HSV )を全部死滅させてしまうような治療法はありません。しかし、有効な抗ウイルス剤の使用により、症状が出ている期間を短縮したり、症状の出現を予防したりすることができます。

病原体は?

 性器ヘルペス感染症の病原体である単純ヘルペスウイルス( herpes simplex virus : HSV )は、(ヒト)ヘルペスウイルス(HHV)の仲間です。他のヘルペスウイルスの仲間と同様に、最初の感染が治っても、体内で潜在感染を続けることが知られています。最初の感染が治っても、単純ヘルペスウイルス( herpes simplex virus : HSV )が体内からすべて消滅するわけではありません。治った後も、体内に休眠状態で存在します。そして、その休眠状態から単純ヘルペスウイルス( herpes simplex virus : HSV )が活性化して性器ヘルペス感染症を何度も繰り返して発病することがあります。

 (ヒト)ヘルペスウイルス(HHV)の仲間として、他には、varicella-zoster virus (VZV:水痘−帯状疱疹ウイルス)などがあります。VZVは水痘(みずぼうそう)と帯状疱疹(帯状ヘルペス)との二つの病気に関わるウイルスです。(ヒト)ヘルペスウイルス(HHV)の仲間については、当・横浜市衛生研究所ホームページの「サイトメガロウイルスについて」をご覧下さい(下線部をクリックして下さい)。

予防のためには・・・

 性交渉において、最初から最後まできちんとコンドームを使用することによって、性器ヘルペス感染症となる可能性を下げることができます。しかし、コンドームは完全な予防法ではありません。穴があいたり、破けたり、外れたりすることがあります。また、コンドームにおおわれない部分に性器ヘルペス感染症の病変があるような場合には、予防できません。自分が性器ヘルペス感染症になった場合、性交渉の相手を感染させないためには、水疱(水ぶくれ)や潰瘍といった症状がある間は性交渉を控え、無症状のときでもコンドームを使用するようにしましょう。

参考文献

  1. CDC; Seroprevalence of Herpes Simplex Virus Type 2 Among Persons Aged 14-49 Years --- United States, 2005-2008; MMWR / April 23, 2010 / Vol. 59 / No. 15, p.456-459.

2001年5月1日掲載
2010年5月6日改訂増補

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横浜市衛生研究所 感染症・疫学情報課 - 2008年4月1日作成
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