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ヒト-メタニューモウイルス感染症について

流行は?

 ヒト-メタニューモウイルス(human metapneumovirus: HMPVまたはhMPV)は、あらゆる年代の人々で、上気道炎や下気道炎を起こします。特に小さいこどもたちや高齢者、免疫が弱まった人々での上気道炎や下気道炎が目立ちます。こどもたちにおいては、ヒト-メタニューモウイルス(HMPV)やRSウイルス(RSV)・パラインフルエンザウイルス(PIV)・インフルエンザウイルスが、気管支炎や下気道炎の主たる病原体です。ヒト-メタニューモウイルスは、比較的最近の2001年にオランダで発見されたウイルスで、遺伝子的にも、症状的にも、RSウイルス(RSV)に近いウイルスです。アメリカ合衆国においては、ヒト-メタニューモウイルス感染症によって、5歳未満のこどもたち20,000人程度が毎年、入院していると推計されています(参考文献6)。

 アメリカ合衆国においては、ヒト-メタニューモウイルス感染症の発生は、晩冬から早春にかけてが多いです。毎年、流行は冬から始まり春まで続きます。RSウイルスやインフルエンザウイルスが同時期に流行します。ヒト-メタニューモウイルス感染症の発生は、日本においては、3-6月の発生が多いです。ヒト-メタニューモウイルスの流行のピークは、RSウイルスの流行のピークの1-2か月後になることが多いです。
 こどもたちは、ヒト-メタニューモウイルスに生後6か月から感染し始め、感染を繰り返します。5歳までには大部分のこどもがヒト-メタニューモウイルスの感染歴があります。
 横浜市の病原体定点機関で採取された検体でも、小児の気道炎症状の患者からヒト-メタニューモウイルス(hMPV)がときどき検出されています。当・横浜市衛生研究所ホームページ「病原体定点からのウイルス検出状況」をご参照下さい。

 アメリカ合衆国においては、全国呼吸器系・消化器系ウイルス監視システム(National Respiratory and Enteric Virus Surveillance System[NREVSS])で国内のウイルス流行状況を把握しています。NREVSSは、全国の約300の臨床、公衆衛生の検査機関が週毎にウイルス検査結果について国に報告するシステムです。NREVSSによって把握された、アメリカ合衆国における2008-2014年(6シーズン)のヒト-メタニューモウイルス(HMPV)の流行状況をまとめた調査研究があります(参考文献6)。
 HMPV検査における陽性率は7-11月において1%未満ですが、3-4月に6-16%の最大値に達しています。流行期間については早い年(2009-2010冬春季、2011-2012冬春季、2013-2014冬春季)と遅い年(2008-2009冬春季、2010-2011冬春季、2012-2013冬春季)とが交互にある二年周期が見られました。このような二年周期は、RSウイルス(RSV)やインフルエンザウイルスでは認められませんでした。
 ヒト-メタニューモウイルス感染症の流行期間の開始は、6シーズンの中位数で1月上旬(第1週)でした。早いときで11月下旬(第48週)、遅いときで2月下旬(第7週)で、いずれも6シーズンの中位数の1月上旬(第1週)から6週間以内でした。
 ヒト-メタニューモウイルス感染症の流行期間の終わりは、6シーズンの中位数で5月中旬(第20週)でした。早いときで4月下旬(第16週)、遅いときで7月上旬(第27週)で、いずれも6シーズンの中位数の5月中旬(第20週)から7週間以内でした。
 ヒト-メタニューモウイルス感染症の流行のピークは、6シーズンの中位数で3月下旬(第12週)でした。早いときで2月下旬(第7週)、遅いときで5月上旬(第17週)でした。
 ヒト-メタニューモウイルス感染症の流行期間は、6シーズンの中位数で21週間でした。短いときで19週間、長いときで25週間でした。
 RSウイルス(RSV)の流行状況については、年による変化は乏しいです。流行期間の開始は、6シーズンの中位数で11月(第45週)でした。早いときで10月(第43週)、遅いときで11月(第46週)でした。流行期間の終わりは、6シーズンの中位数で3月(第13週)でした。早いときで3月(第11週)、遅いときで4月(第14週)でした。流行のピークは、6シーズンの中位数で1月(第3週)でした。早いときで12月(第52週)、遅いときで2月(第5週)でした。流行期間は、6シーズンの中位数で21週間でした。短いときで20週間、長いときで23週間でした。
 RSウイルス(RSV)の流行については、ヒト-メタニューモウイルス感染症の流行よりも、開始、終わり、ピークのいずれとも先行しています。また、流行期間についてはインフルエンザウイルスの年による変動が大きいものの、流行期間の中位数(最小値-最大値)については、ヒト-メタニューモウイルスが21週間(19-25週間)、RSウイルスが21週間(20-23週間)、インフルエンザウイルスが22週間(13-32週間)とほぼ一致しています。

 2006-2007年冬季、2007-2008年冬季、2008-2009年冬季、の三年間の冬季にアメリカ合衆国テネシー州のナッシュビルのDavidson郡で急性呼吸器疾患で病院に入院した住民患者の鼻腔・咽頭からの検体で、RSウイルス(RSV)、ヒト-メタニューモウイルス(HMPV)、インフルエンザウイルスについて、RT-PCR法で検査した調査研究があります(参考文献7)。Davidson郡の50歳以上の住民1万人あたりの年間入院率は、RSV感染症で15.01人、HMPV感染症で9.82人、インフルエンザで11.81人と、同等レベルでした。一方、65歳以上の住民ではRSV感染症の入院率25.4人、HMPV感染症の入院率22.1人、インフルエンザの入院率12.3人と、インフルエンザの入院率はRSV感染症の入院率やHMPV感染症の入院率の二分の一程度でした。65歳以上の住民でRSV感染症やHMPV感染症に比較してインフルエンザの入院率が少ないのは、高齢者で接種率が高いインフルエンザ予防接種の影響が考えられます。インフルエンザ患者と比較して、RSV感染症患者は、より、65歳以上であり、免疫抑制状態(臓器移植、癌、脾臓切除、HIV感染症/AIDS、ステロイド使用、化学療法、免疫抑制療法)でした。インフルエンザ患者と比較して、HMPV感染症患者は、より、高齢であり、心血管疾患があり、非喫煙者であり、インフルエンザワクチンを受けていて、発熱の訴えが少なかったです。

どんな病気?

 ヒト-メタニューモウイルス(HMPV)の感染によりよく見られる症状は、咳、鼻水、咽頭痛、発熱、息切れです。結膜炎、嘔吐、下痢や発疹が報告されることがありますが、少ないです。症状は、一週間程度で良くなりますが、気管支炎、肺炎、クループ、喘息・COPD(慢性閉塞性肺疾患)の悪化等、重症になることもあります。感染してから発病するまでの潜伏期は、3-6日です。発熱期間は平均5日と比較的長いです。気道から7-14日間に亘りウイルスが排泄されます。

 小児のウイルス性呼吸器感染症の5-10%がヒト-メタニューモウイルスによるとされます。一度の感染では十分な免疫が獲得されず、感染を繰り返しますが感染を繰り返す毎に症状は軽くなります。成人においても、ウイルス性呼吸器感染症の2-4%がヒト-メタニューモウイルスによるとされます。
 年長児や成人では、軽症な上気道の感染症(かぜ、鼻炎、咽頭炎、副鼻腔炎など)や無症状の不顕性感染となりますが、乳幼児や高齢者・免疫不全者では重症な下気道の感染症(細気管支炎、喘息様気管支炎、肺炎など)となる可能性があります。ヒト-メタニューモウイルスは急性中耳炎とも関係し、中耳の浸出液からヒト-メタニューモウイルスのRNAが検出されることがあります。3歳未満のヒト-メタニューモウイルスによる気道感染症患者の61%に急性中耳炎の併発が見られたとのフィンランドのTurkuにおける調査研究もあります(参考文献8)。

 ヒト-メタニューモウイルス感染症の症状とRSウイルス感染症の症状とは大変よく似ていて、症状だけで両者を区別することは困難だとされます。
 RSウイルス感染症と比較すると、乳幼児について、RSウイルス感染症が一歳以下で多いのに対して、ヒト-メタニューモウイルス感染症は1-2歳で多いです。症状について、RSウイルス感染症が鼻水が多いのに対して、ヒト-メタニューモウイルス感染症は発熱が多いです。RSウイルス感染やA型インフルエンザウイルス感染よりも、ヒト-メタニューモウイルス感染では、不顕性感染が多いです。

 ヒト-メタニューモウイルス(HMPV)は、人、チンパンジー、サル、ラット、ハムスター、シロイタチ、マウス、ギニアピッグなどに感染します。鳥類には感染しません。

病原体は?

 Human metapneumovirus (ヒト-メタニューモウイルス)は、Pneumoviridae 科(Family)のMetapneumovirus 属(Genus)に属します。Human respiratory syncytial virus (ヒトRSウイルス)は、: Pneumoviridae 科(Family)のOrthopneumovirus 属(Genus)に属します。Pneumoviridae 科(Family)に属するのはMetapneumovirusOrthopneumovirusの二つの属(Genus)だけです。Human metapneumovirus (ヒト-メタニューモウイルス)は、Human respiratory syncytial virus (ヒトRSウイルス)と遺伝子的に近い関係にあります。

 Human metapneumovirus (ヒト-メタニューモウイルス)は、遺伝子系統樹解析により、グループAとグループBとに大別され、それぞれのグループはさらに1と2との二つのサブグループに分類されます。つまり、A1, A2, B1, B2の四つのサブグループに分類されます。同時期に同じ地域で複数のサブグループが流行することがあります。

 

 Human metapneumovirus (ヒト-メタニューモウイルス)について、イムノクロマト法によるhMPV抗原定性検査が、2014年1月1日から、「画像診断により肺炎が強く疑われるhMPV感染症の6歳未満の患者」に体外診断用医薬品として保険適用されました(参考文献4)。

予防のためには・・・

 ヒト-メタニューモウイルス感染症に対するワクチン(予防接種)は、ありません。
 なお、予防接種(ワクチン)ではありませんが、RSウイルス感染症については、抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体のパリビズマブ(遺伝子組み換え)という注射薬が、開発され、予防のために使用されています。これと同様の予防効果を期待して、抗ヒト-メタニューモウイルスヒト化モノクローナル抗体の注射薬の開発が試みられています(参考文献3)。

 ヒト-メタニューモウイルスは、感染者の体内から、咳などによる飛沫や鼻水などの分泌物の中に出てきます。ヒト-メタニューモウイルス感染症を広げないあるいは、ヒト-メタニューモウイルス感染症にかからないためには、病原体(ヒト-メタニューモウイルス)を広げないあるいは、病原体(ヒト-メタニューモウイルス)をもらわない習慣を身に付けていることも大切だと思われます。呼吸器からの飛沫を少なくするには、マスクをする。咳・痰・くしゃみ・鼻水のときには、ティシュペーパーで口と鼻とをおおう。その後すぐに手をよく洗う。手を乾かすのは、使い捨てタオル、ドライヤー。タオルは自分専用にして他の人と共用しない。手が病原体を粘膜まで運び、粘膜から病原体が侵入する可能性も考えられます。眼・鼻・口などに触れるときには、事後だけでなく事前にも手をよく洗いましょう。換気の少ない狭い空間で多人数で長時間すごすのは控えましょう。あいさつは、握手・抱擁・キスなどの身体接触を止めて、会釈や言葉だけで済ませましょう。多くの人が触る公共物に触るのは控えましょう。触ったら、すぐに手をよく洗いましょう。帰宅したら、うがいをして手を洗う習慣を付けましょう。

参考文献

  1. International Committee on Taxonomy of Viruses (ICTV): Virus Taxonomy Assignments.(ウイルス分類)
  2. Verena Schildgen, Bernadette van den Hoogen, Ron Fouchier, Ralph A. Tripp, Rene Alvarez, Catherine Manoha, John Williams, and Oliver Schildgen; Reviews: "Human Metapneumovirus: Lessons Learned over the First Decade"; Clinical Microbiology Reviews(CMR). October 2011 ; VOL. 24(4):p. 734-754. doi:10.1128/CMR.00015-11
  3. Wen SC, Williams JV. New approaches for immunization and therapy against human metapneumovirus. Clin Vaccine Immunol(CVI); August 2015.22:858-866. doi:10.1128/CVI.00230-15.
  4. 菊田英明、[新しい検査法]迅速ヒトメタニューモウイルス診断キット --保険適用されたイムノクロマト法によるhMPV抗原定性-- 、モダンメディア 60巻、5号、2014年、p. 169-173.
  5. 菊田英明、(総説) 3. ヒト・メタニューモウイルス、ウイルス 第56巻 第2号、2006年、p. 173-182.
  6. Haynes AK, Fowlkes AL, Schneider E, et al. Human Metapneumovirus Circulation in the United States, 2008 to 2014. Pediatrics. May 2016;Volume 137(Issue 5): e20152927,
    DOI: 10.1542/peds.2015-2927.
  7. Kyle Widmer, Yuwei Zhu, John V. Williams, Marie R. Griffin, Kathryn M. Edwards and H. Keipp Talbot; Rates of Hospitalizations for Respiratory Syncytial Virus, Human Metapneumovirus, and Influenza Virus in Older Adults; J Infect Dis(JID). (1 July 2012) 206 (1): 56-62. doi: 10.1093/infdis/jis309
  8. Terho Heikkinen, Riikka Oesterback, Ville Peltola, Tuomas Jartti, and Raija Vainionpaeae; Human Metapneumovirus Infections in Children; Emerging Infectious Diseases(EID), Vol. 14, No. 1, January 2008, p. 101-106.(PDF版 [pdf:199KB] )

2016年9月15日掲載

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横浜市衛生研究所 感染症・疫学情報課 - 2016年9月15日作成
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