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ジアルジア症について

流行は?

 ジアルジア症は、Giardia intestinalis (あるいはGiardia lamblia と呼ばれることもあります。)によって起こされる下痢の病気です。Giardia intestinalis は、一つの細胞からなる小さな寄生生物で顕微鏡でないと判別できません。人や動物(ネコ、イヌ、ウシ、鹿、ビーバーなど)の腸の中に寄生します。Giardia intestinalis は、感染した(寄生された)人や動物の便の中に出てきます。Giardia intestinalis はシストの状態では外側の殻に守られて、人や動物の体外でも長期にわたって生き延びることができます。世界中で、湖・川などでGiardia intestinalis が検出されることがあります。アメリカ合衆国では、人が口の中に水を入れることによって感染する病気の中の主要な一つとジアルジア症はみなされています。町の飲用水や水遊びの水がGiardia intestinalis に汚染されることによって、多くの人がジアルジア症になることがありえます。水遊びの水とは、水泳用のプール、風呂、ジャクージ(jacuzzi : 噴流式泡風呂)、泉、噴水、湖、池、川などの水です。日本でも湖・川などでGiardia intestinalis が検出されることがあります。

 アメリカ合衆国での統計によれば、ジアルジア症の発生は、年齢層で見ると0-5歳に1番多く、次いで31-40歳に多いです。季節的には、これらの年齢層で夏季に発生している場合が多いです。これは夏の水遊びが盛んな時期と一致します。アメリカ合衆国では、年間に250万人のジアルジア症の患者が発生しているとの推計もあります。また、アメリカ合衆国では、飲用水が汚染されて集団で発生した感染症の病原体としては、1976-1994年において、Giardia intestinalis が主要なものの一つです。

 アメリカ合衆国では、ジアルジア症の発生が多い人々は、保育園・託児所のこども、そのこどもと接触が多い人たち、男性と性交渉を持つ男性、キャンプする人たち、リュックサックを背負って旅する人たち、浅い井戸の水を飲んでいる人たち、ジアルジア症の発生が多い地域への旅行者です。

 日本の感染症発生動向調査においては、平成11年4月の感染症予防法施行以来、平成13年6月15日現在までのジアルジア患者発生報告数は総計209人ですが、その年齢分布を見ると、0-4歳が1人、5-9歳が1人、10-14歳が1人、15-19歳が4人とこどもたちからの発生の報告数が少なく、また感染地が国外(インド・タイなど)となっているものが93人(44.5%)と多いです。感染地が国内となっている者は、84人(40.2%)ですが、その性別・年齢層別の患者数を見ると、グラフ(下線部クリックしてグラフを見てください。)のとおりですが、0歳から44歳までの患者数が男性が30人に対して女性が2人であり、若い成人男性および45歳以上の男女の患者が多いです(参考文献:国立感染症研究所「病原微生物検出情報月報2001年7月号<特集>クリプトスポリジウム症およびジアルジア症」)。

 ジアルジア症は、世界中で見られます。便検査におけるGiardia intestinalis の検出は、先進国では2-5%、発展途上国では20-30%です。しかし、アメリカ合衆国でも、保育園・託児所のこどもにおいては、通常の状態で35%で検出された例もあります。

どんな病気?

 ジアルジア症の症状は、通常、Giardia intestinalis が口の中にはいってから、1-2週間(あるいは3-25日の場合もあります。)後に出現します。ジアルジア症の症状は、下痢、水のような便、やわらかすぎる便、腹痛、胃腸のガス、腹部膨満、悪臭の便などで腹の具合が悪くなります。吐き気や嘔吐、食欲減退、疲労、悪寒を起こす人もいます。これらの症状のため、体重の減少や脱水が起こりやすいです。しかし、一方で感染しても何の症状も見られない人もいます。

 他に健康に問題のない人では、ジアルジア症の症状は、2-6週間続くことが多いです。もっと長く症状が続く人もいます。慢性のジアルジア症では、症状が反復して出現し、吸収不良、栄養不良から衰弱してしまう場合もあります。ジアルジア症の治療薬としては、妊婦以外では Metronidazole が使われることが多いです。妊婦には使うことができない治療薬が多いです。アメリカ合衆国では、妊婦には Paromomycin が治療薬として使われることがあります。

 Giardia intestinalis は、感染した人や動物の腸の中で生活しています。感染した人や動物から排便された便の中には、何百万のGiardia intestinalis が含まれています。このGiardia intestinalis を飲み込むことによって人はジアルジア症になります。感染した人や動物から排便された便によって汚染された土、食物、水、地面などにGiardia intestinalis は見られます。Giardia intestinalis は血液を介しては広がりません。

病原体は?

 ジアルジア症の病原体は、Giardia intestinalis という原生動物です。Giardia intestinalis は、一つの細胞からなる小さな寄生生物で顕微鏡でないと判別できません。この原生動物は、最初、1859年に Lambl によってCercomonas intestinalis と名づけられました。そして、さらに1915年にパリの A.Giard 教授(フランスの生物学者。1846年生まれ。)とプラハのF.Lambl博士に因んで Stiles によってGiardia lamblia と名づけなおされました。しかしながら、現在では、Giardia intestinalis が正式名とされています。

 感染は、Giardia intestinalis のシストが付着した食物や水を人が飲み込むことで起こります。ヒトは、10個のシストだけでも感染します。飲み込まれたシストは、人の十二指腸で、二つの栄養型(trophozoite)になります。シストは、外側の殻で守られた玉子のような存在です。栄養型(trophozoite)は、ハートの形をした単細胞で二つの核を持ち、吸盤で小腸粘膜に付着する一方で、鞭毛を持っていて小腸の中を自由に動いているように見えます。Giardia intestinalis が「ランブル鞭毛虫」と呼ばれることもある由縁です。栄養型は、分裂して増えていきます。小腸から大腸へと移るときに、栄養型(trophozoite)は、シストへと変化します。便の中には、シストも栄養型(trophozoite)も出てきます。栄養型(trophozoite)は、体外環境では生き残れません。シストは、体外環境でも生き残り、他の人や動物の口から入って感染を起こします。シストは、冷たい水の中では数ヶ月生存しています。

予防のためには・・・

 ジアルジア症のワクチン(予防接種)はありません。

 生で食べる野菜や果物は、汚染していない水でよく洗いましょう。

 調理や配膳、食事の前には、手をよく洗いましょう。

 トイレの後やオムツ替えの後には、手をよく洗いましょう。何人ものオムツを替える際には、一人終える毎に、手をよく洗いましょう。

 水遊びの時には、水を飲み込まないようにしましょう。

 生水を飲むのは、やめましょう。どうしても、生水を飲まなければならないときには、その生水を加熱して少なくとも1分間は沸騰させて、さましてから飲みましょう。

 下痢をしている人は、泳ぐことを控えましょう。

 性交渉においては、便との接触は避けましょう。

参考文献

  1. Giardiasis Surveillance, United States, 1992-1997,Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR) August 11, 2000; Vol.49, CDC Surveillance Summaries No.7: pp.1-13.

2001年9月21日掲載

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横浜市衛生研究所 感染症・疫学情報課 - 2008年4月1日作成 - 2008年4月1日更新
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