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B群レンサ球菌(GBS)感染症について

始めに

 B群レンサ球菌感染症は、健康な妊娠・出産のために注意したい感染症の一つです。
 B群レンサ球菌(Group B Streptococcus : GBS :但し、GBSは、ギラン-バレー症候群の略称としても使われることがあり、紛らわしいので注意が必要です。)は、膣内に常在することのある細菌で、妊婦以外では、膀胱炎などの尿路感染症でもおこさない限り問題となることは少ないです。ところが、出産時にこのB群レンサ球菌が膣内に存在すると、生まれる新生児に敗血症、髄膜炎、肺炎などの重症のB群レンサ球菌感染症を起こすことがありえることが知られています。この母から子への感染が問題とされています。アメリカ合衆国では、この可能性をチェックするために、妊娠35-37週に膣内・直腸内のB群レンサ球菌の有無を調べる培養検査が行われています。B群レンサ球菌が認められた場合には、母親から赤ちゃんへのB群レンサ球菌の感染を防ぐために、分娩時の母親への抗生物質の点滴投与が、予防的に行われることがあります。
 さて、このB群連鎖球菌(Group B Streptococcus : GBS)は、こどもののどに付いてよく炎症を起こして高熱を出す、A群溶血性連鎖球菌とは名前が紛らわしいですが、別の細菌です。今回は、このB群連鎖球菌を話題とします。

流行は?

 B群連鎖球菌(Group B Streptococcus : GBS)は、新生児に細菌性髄膜炎を起こすことがあります。1999年4月からの日本の感染症発生動向調査では、細菌性髄膜炎は4類感染症として基幹定点病院による把握疾患となりました(現在は5類感染症)。この日本の感染症発生動向調査において、1999年4月-2001年12月に国に報告された細菌性髄膜炎患者数は763例(1999年4-12月235例、 2000年256例、 2001年272例)でした。年齢層では0歳が29%、1-4歳が29%と、0-4歳で半数以上を占めています。男性456例に対して女性307例といずれの年齢層でも男性が多いです。763例中、病原菌名も国に報告されたものは約半数で、 ヘモフィルス-インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae )が143例と最も多く、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae )が90例でこれに次いでいます。以下、B群レンサ球菌(Group B Streptococcus :GBS)22例、大腸菌(Escherichia coli )14例などでした(参考文献2)。
 砂川らが行った日本における1997年7月以降3年間の小児化膿性髄膜炎の全国アンケート調査(全国277施設の小児科にアンケートを送り、135施設から回答を得ている。)によれば、収集された428症例において、分離された菌は、多いものから204株のインフルエンザ菌、87株の肺炎球菌、25株のB群連鎖球菌、24株の大腸菌などでした。B群連鎖球菌については、患児は4ヶ月児以下が大部分で0ヶ月児が半数近くを占めました(参考文献4)。
 1990年のアメリカ合衆国での調査では、アメリカ合衆国では、7600人が新生児のB群レンサ球菌感染症にかかり、310人が死亡していると推定されました。つまり、アメリカ合衆国では、1990年には、出生1000人につき1.8人程度の新生児のB群レンサ球菌感染症の患者発生であり、発病した場合の致死率は4.1%程度でした。
 1990年台に、アメリカ合衆国では、新生児のB群レンサ球菌感染症の予防のために、妊娠35-37週に膣内・直腸内のB群レンサ球菌の有無を調べる培養検査や分娩時の母親への抗生物質の点滴投与が、だんだんと医療機関で行われるようになっていきました。Schragらのアメリカ合衆国での調査によれば、新生児のB群レンサ球菌感染症は、1993年には出生1000人につき1.7人程度の患者発生であったのが、65%減少し、1998年には出生1000人につき0.6人程度の患者発生となりました(参考文献3)。2000年、2001年には出生1000人につき0.5人程度の患者発生となり、1993年と比較すると、約70%の減少です。近年では、出生1000人につき0.34-0.37人程度の患者発生となりました(参考文献11)。1993年と比較すると、約80%の減少です。母親が分娩前にB群レンサ球菌の定着についての検査を受けた新生児の割合は、1998-1999年に48.1%だったのが、2003-2004年に85.0%と増加しています。2003-2004年に検査を受けた母親は98.4%が分娩時には検査結果を得ていました。
 英国では、新生児のB群レンサ球菌感染症は、出生1000人につき1人程度の患者発生と推計されています。1970年台には、出生1000人につき0.3人程度の患者発生だったとされていて、だんだん増加してきたと考えられています。また、新生児のB群レンサ球菌感染症について報告の必要がなく、自発的報告に基づいての数字であるとして、実際の数字はもっと高いとする意見もあります。
 なお、2000年2月1日から2001年2月28日までの期間、英国及びアイルランド共和国で、日齢90日未満でB群レンサ球菌感染症を発病した乳児の数が調査されました。この調査では、出生1000人につき0.7人の患者発生でした。この調査では、B群レンサ球菌感染症と確定するための要件が厳しく、B群レンサ球菌感染症が確実な患者の数しか含まれていません。B群レンサ球菌感染症の疑いがある患者も患者の数に含めれば、より高い数字になると思われます。真の値については、出生1000人につき0.9人以上の患者発生ではないかとも、されています(参考文献6)。
 アメリカ合衆国と同様に、母親が出産前の妊娠後期にB群レンサ球菌の膣への定着についての検査を受け、B群レンサ球菌を認めた場合には母親から赤ちゃんへのB群レンサ球菌の感染を防ぐために、分娩時の母親への抗生物質の点滴投与が、予防的に行われる制度としている国には、オーストラリア、アルゼンチン、ベルギー、カナダ、チェコ、フランス、ドイツ、香港、イタリア、ケニア、ポーランド、スペイン、スロベニア、スイスなどがあります。そのような制度になってからは、新生児のB群レンサ球菌感染症の患者発生は各国で減少が見られていて、スペインでは86%、オーストラリアでは82%、フランスでは71%の減少です(参考文献12)。

どんな病気?

 B群連鎖球菌(Group B Streptococcus : GBS)は、新生児だけでなく、妊婦、老人、糖尿病・肝臓疾患の患者等でも感染症を起こすことがある細菌です。特に新生児では、命にかかわる感染症を起こすことがあります。B群連鎖球菌は、新生児における、敗血症や髄膜炎、肺炎の主要な原因菌の一つです。髄膜炎が死亡原因となることもありますし、髄膜炎の後遺症として、聴力や視力が失われたり、運動や学習の障害などが残るこどももいます。妊婦では、膀胱炎や子宮の感染症(羊膜炎、子宮内膜炎)、死産を起こすことがあります。妊婦以外では、尿路感染症、敗血症、皮膚・軟部組織の感染症および肺炎を起こすことがあり、死亡例もあります。
 老若男女を問わず、多くの人が、体にB群レンサ球菌を持っていますが、なんの症状もない場合が多いです。そのような場合、これらの人々は、保菌者(carrier)と呼ばれることがあります。成人は、何の症状もなく腸・膣・のど・膀胱にB群レンサ球菌を持っていることがあります。アメリカ合衆国の統計では、なんの症状もなくても、妊婦は4-5人に1人の割合で膣・直腸にB群レンサ球菌を持っています。但し、この妊婦が膣・直腸にB群レンサ球菌を持っている率は、地域・人種によって差が見られ、アメリカ合衆国ではアフリカ系アメリカ人で高めです。妊婦が膣・直腸にB群レンサ球菌を持っていれば、赤ちゃんは分娩中にB群レンサ球菌に接触する可能性があります。ただし、B群レンサ球菌の保菌者といっても一時的に保菌している場合が多く、長期にわたる保菌者というわけではありません。B群レンサ球菌の保菌者については、あくまでも、検査した時点における保菌者ということになります。
 B群レンサ球菌を持っている母親から生まれる赤ちゃんで約100-250人に1人の割合でB群レンサ球菌感染症の徴候が出ます。B群レンサ球菌感染症の赤ちゃんの約75-90%は、生まれて1週間以内に発症する「早発型」です。その大部分は誕生後数時間以内の発症です。「早発型」の約90%は、誕生後24時間以内の発症です。この「早発型」でよく見られるのは、敗血症、髄膜炎、肺炎、呼吸不全などです。個々で見ると早産児の方が満期で生まれた赤ちゃんよりもB群レンサ球菌感染症になりやすいです。しかし、アメリカ合衆国の統計では、総計で見るとB群レンサ球菌感染症になる赤ちゃんの大部分(約75%)は、満期で生まれた赤ちゃんです。B群レンサ球菌感染症は、生後1週間から数ヶ月の赤ちゃんでも発症することがあり、「晩発型」と呼ばれることがあります。この「晩発型」では、肺炎、呼吸不全は見られることは少なく、髄膜炎と敗血症が見られることが多いです。他に、中耳炎、関節炎、骨髄炎、結膜炎、副鼻腔炎、蜂窩織炎、壊死性筋膜炎 などが見られることがあります。「晩発型」となった赤ちゃんの約半数は、B群レンサ球菌の保菌者である母親から生まれて母親と同一のB群レンサ球菌の株に感染した赤ちゃんですが、残りの約半数の赤ちゃんについては感染源は不明です。 B群レンサ球菌の保菌者の手や気道からB群レンサ球菌が検出されることがありえます。自分がB群レンサ球菌の保菌者である可能性も考えて、新生児に触れる前にはよく手をあらいましょう。新生児に、ミルク(人工乳)を与える場合には哺乳ビン等の清潔に、母乳を与える場合には乳首等の清潔に、気をつけましょう。
 侵襲性のB群レンサ球菌感染症は、本来は細菌が存在しないはずの部位、例えば血液や髄液からの培養でB群レンサ球菌が分離されたとき、診断されます。培養には数日かかります。アメリカ合衆国における調査では、新生児における侵襲性のB群レンサ球菌感染症では、89%が菌血症(血液中に細菌が検出される状態)が見られ、10%で菌血症の有無に関わらず髄膜炎が見られます(参考文献8)。B群レンサ球菌感染症は、新生児でも、大人でも、通常、抗生物質(例えば、ペニシリンやアンピシリン)の点滴投与で治療されます。妊婦がB群レンサ球菌を保菌しているかどうかは、膣・直腸の検体から培養でB群レンサ球菌が分離されるかどうかで、わかります。B群レンサ球菌の保菌者を見つけるための培養検査は、妊娠の遅い時期(妊娠35-37週)に行われます。分娩時に母親がB群レンサ球菌を膣内に持っているかどうかは、この培養検査の時期が早すぎると、正確には予測できないのです。培養検査で陽性(B群レンサ球菌が分離される)ということは、検査の時点で母親が膣内にB群レンサ球菌を持っていることを意味します。培養検査で陽性であれば、分娩時に膣内にB群レンサ球菌を母親が持っている可能性を考えて、分娩時の母親への抗生物質の点滴投与が母親から赤ちゃんへのB群レンサ球菌の感染を防ぎます。
 分娩時に母親がB群レンサ球菌を膣内に持っているかどうか予測するための培養検査は、妊娠35週より前の実施では早すぎます。また、妊娠37週より後の実施では、培養検査の結果が明らかになる前に出産してしまう可能性が高くなり、検査結果が役立たない可能性が高くなります。分娩の前、5週間以内に実施された培養検査はたいへん有益です。陽性であれば、分娩時に母親がB群レンサ球菌を膣内に持っている確率は、87%です。陰性であれば、分娩時に母親がB群レンサ球菌を膣内に持っていない確率は、96%です。
 分娩時に母親がB群レンサ球菌を膣内に持っているかどうか予測するための培養検査は、咽頭炎や肺炎などで抗生物質の投与中の場合には、受けるべきではありません。抗生物質による影響を避けるため、抗生物質の投与の終了後、できるだけ間隔を開けて、少なくても7日以上経ってから、受ける方が良いでしょう。

病原体は?

 B群連鎖球菌(Group B Streptococcus : GBS)は、A群溶血性連鎖球菌肺炎球菌とともに連鎖球菌(Streptococcus)の仲間(Streptococcus family: 連鎖球菌科) です。Streptococcus agalactiae と呼ばれることもあります。streptoは、ギリシア語で「ひねる」の意味のstrephoから来たstreptosに由来します。ひねることで、より糸が作られますが、顕微鏡下では、球菌(coccus)が連なって鎖状あるいは、より糸状に見えることによります。連鎖状に見えるのは、連鎖球菌(Streptococcus)が一方向に分裂して増える性質を持っていることによります。球菌(coccus)は、ギリシア語でベリー(核がない、果肉が柔らかな食用の小さな果実。イチゴ類など。)を意味するkokkosに由来します。B群は、Lancefield分類に基づきます。また、連鎖球菌(Streptococcus)は、赤血球を消化してしまう性質を持つものが多く、完全に赤血球を消化してしまうものをβ(ベータ)溶血性、部分的に赤血球を消化するものをα(アルファ)溶血性、全然赤血球を消化しないものをγ(ガンマ)溶血性あるいは非溶血性と言います。B群連鎖球菌はβ(ベータ)溶血性です。そこで、B群連鎖球菌のことを、B群β(ベータ)溶血性連鎖球菌と呼ぶこともあります(血性鎖球の部分は溶連菌と省略されることもあります)。なお、A群溶血性連鎖球菌はβ(ベータ)溶血性で、肺炎球菌はα(アルファ)溶血性です。
 B群連鎖球菌(Group B Streptococcus : GBS)が人体で通常よく見られるのが腸の中です。約3分の1の人で見られますが、何の症状も見られないのが通常です。のどにも見られることがあり、約5%の人で見られます。膣にも見られますが、部位的に腸のB群連鎖球菌が広がりやすいです。腸以外の部位では、B群連鎖球菌の存在は一時的で、あるとき検出されても次回は検出されず次々回では再び検出されるということがよくあります。ですから、妊娠35-37週に膣内のB群レンサ球菌の有無を調べる培養検査については、アメリカ合衆国では、膣内だけでなく腸(直腸)内のB群レンサ球菌培養検査も行われています。膣内や直腸内に見られることから、性的接触によって人から人へと広がる可能性もあります。また、有効な抗生物質の使用は、一時的にB群連鎖球菌を体から排除するかもしれませんが、使用終了後に再びB群連鎖球菌が見られるのが通常です。妊娠中に膣におけるB群レンサ球菌の定着が見られた母親が妊娠28-40週に12-14日間の抗生物質の投与を受けた場合に、その3週間後や分娩時に再びB群レンサ球菌の定着が見られた率は、約70%だったとする研究があります(参考文献6)。さらに、B群連鎖球菌に対する抗体を持っているのは、成人では、10人に1人にすぎません。

 B群レンサ球菌は、妊婦の2-7%で尿中から検出されます。妊婦のB群レンサ球菌による細菌尿は、B群レンサ球菌がしっかりと産道に定着していることの一つの指標です。妊婦のB群レンサ球菌による細菌尿では、新生児の早発型のB群レンサ球菌感染症の危険性が高いです。妊娠中にB群レンサ球菌による細菌尿の治療目的で抗生物質の投与を受ける妊婦もいますが、尿路生殖器や消化器からB群レンサ球菌は完全には排除されず、抗生物質の投与終了後に再び定着してしまうことがよく見られます。妊娠中のいずれの時期でもB群レンサ球菌による細菌尿が妊婦に認められたことがある場合には、分娩時に抗生物質療法を受けることが、1996年からアメリカ合衆国では勧められています。

 B群レンサ球菌は、莢膜(カプセル)のポリサッカライドに基づき、九つの血清型に分類されます。Ia型、Ib型、II型、III型、IV型、V型、VI型、VII型、VIII型です。

予防のためには・・・

 新生児のB群レンサ球菌感染症の大部分は、分娩時の母親への抗生物質の点滴投与により、予防することができます。そこで、B群レンサ球菌を保菌している妊婦は、破水・分娩時に抗生物質療法を受けることが、アメリカ合衆国では勧められています。また、B群レンサ球菌感染症の赤ちゃんを以前に出産したことのある妊婦や、今回の妊娠中にB群レンサ球菌による尿路感染症や細菌尿があった妊婦も、破水・分娩時に点滴による抗生物質療法を受けることが、アメリカ合衆国では勧められています。
 なお、破水・分娩開始時に母親のB群レンサ球菌の保菌について明らかでなくて、次のいずれかの条件にあてはまる場合にも、破水・分娩時に抗生物質療法を受けることが、アメリカ合衆国では勧められています。
 ○ 分娩中の摂氏38.0度以上の発熱。
 ○ 破水後、18時間以上経過して分娩に至らない。
 ○ 妊娠37週より前の破水・分娩。
 ○ 破水・分娩時に膣内・直腸内の遺伝子検査(Nucleic Acid Amplification Test: NAAT あるいは NAT: 核酸増幅検査)によりB群レンサ球菌が検出された。

 他にリスクがない場合に、B群レンサ球菌を保菌している妊婦で、ペニシリンのような抗生物質を使うことによるアメリカ合衆国などでの利益と不利益は次に列挙するように考えられています。

 * 抗生物質を使わないと、アメリカ合衆国では約200分の1の確率で、英国では約400分の1の確率で、赤ちゃんがB群レンサ球菌感染症となる。

 * 抗生物質を使っても、アメリカ合衆国では約4000分の1の確率で、英国では約8000分の1の確率で、赤ちゃんがB群レンサ球菌感染症となる。

 * 抗生物質を使うと、アメリカ合衆国では約10分の1の確率で、(例えば、ペニシリンで赤い発疹が出るような)抗生物質に対する中等度のアレルギー反応が出る。

 * 抗生物質を使うと、アメリカ合衆国では約10000分の1の確率で、(例えば、ペニシリンでアナフィラキシー・ショックとなるような)抗生物質に対する重症のアレルギー反応が出ます。アナフィラキシー・ショックは、救急治療を必要とし、命にかかわる場合もあります。致命的なアナフィラキシー・ショックとなる確率は、アメリカ合衆国では約100000分の1の確率です。ペニシリンにアレルギーがある場合には、ペニシリン以外の抗生物質の使用が考慮されます。1997-2001年にアメリカ合衆国では破水・分娩時に180万人の女性がペニシリンの投与を受けていますが、アナフィラキシー・ショックでの死亡者はいませんでした。

 また、赤ちゃんがB群レンサ球菌感染症となる確率は、以下のようなことがあると、それぞれの場合ごとに、3倍以上高くなると考えられています。
 ○ 分娩中の発熱。
 ○ 破水後、18時間以上経過して分娩に至らない。
 ○ 妊娠37週より前の破水・分娩。

 双子や三つ子などで一人の赤ちゃんがB群レンサ球菌感染症となった場合には、双子や三つ子の残りの赤ちゃんも、B群レンサ球菌感染症を起こしたB群レンサ球菌の同じ株に曝露している可能性があり、B群レンサ球菌感染症となる危険性が高いです。双子や三つ子の残りの赤ちゃんに、B群レンサ球菌による感染がないとはっきりするまで、感染予防のために、点滴による抗生物質療法を行うことが考慮されます(参考文献6)。

 妊婦にペニシリンの点滴による抗生物質療法を行った場合、投与後2時間で羊水中の抗生物質濃度は最大値に達するとされます。陣痛が始まったら、できるだけ早く、遅くとも、分娩の二時間前までに(理想的には四時間前までに)抗生物質が点滴によって投与されていることが望まれます(参考文献6)。

 B群レンサ球菌感染症から回復した赤ちゃんの約1-3%で再びB群レンサ球菌感染症となることがあります。B群レンサ球菌感染症から回復した赤ちゃんに対して、B群レンサ球菌感染症の再発予防のために生後3 か月間毎日ペニシリンを投与する医師もいますが、医学的にその効果が証明されているわけではありません。ただし、このような毎日のペニシリンの投与が、脾臓のない人々では肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae )に感染する危険を減ずることが明らかになっています(参考文献6)。

 なお、女性に接種して赤ちゃんのB群レンサ球菌感染症を予防するワクチン(予防接種)が研究開発中です。ワクチンを受けた女性の血液中の抗体が、胎盤を通過しておなかの中の赤ちゃんまで達します。この抗体が出産および乳児期初期の赤ちゃんをB群レンサ球菌感染症から守ってくれることを期待するものです。
 英国では、B群レンサ球菌の少なくとも8種類の型がB群レンサ球菌感染症を起こしています。この内の、Ia型、III型、V型に対するワクチンができれば、乳児のB群レンサ球菌感染症の85%を防げる可能性があります。乳児のB群レンサ球菌感染症の早発型だけでなく晩発型も予防します。南アフリカである製薬会社が妊婦を含む18-40歳の320人の女性を対象として臨床試験をしています。臨床試験は今のところ順調ですが、今後、大規模な臨床試験が実施され、B群レンサ球菌ワクチンとして認可されるまでには、すべて順調にいっても、さらに3-5年以上かかるものと思われます(参考文献12)。
 生後3か月(90日)未満の乳児における侵襲性のB群レンサ球菌感染症の血清型を調べた多くの調査研究を分析した研究(参考文献13)があります。III型(48.9%)、Ia型(22.9%)、V型(9.1%)、Ib型(7.0%)、II型(6.2%)が多いです。III型、Ia型、V型、Ib型、II型の五価のワクチンをB群レンサ球菌ワクチンとしてこの研究では提案しています。

参考文献

  1. Prevention of Perinatal Group B Streptococcal Disease: A Public Health Perspective ; MMWR Recommendations and Reports ; May 31, 1996/Vol. 45/No. RR-7, p.1-24.
  2. 「特集・細菌性髄膜炎 2001年現在」;病原微生物検出情報(IASR)2002年2月号;Vol.23 No.2(No.264) p 31-32.
  3. Schrag SJ, et al. ; Group B streptococcal disease in the era of intrapartum antibiotic prophylaxis. ; N Engl J Med. 2000 Jan 6;342(1):15-20.
  4. 砂川慶介ら;本邦における1997年7月以降3年間の小児化膿性髄膜炎の動向;日本感染症学雑誌、Vol.75 No.11 2001(平成13年11月20日), p.931-939.
  5. Protect your baby from group B strep! ; 2002 ; CDC. : アメリカ合衆国のCDC(疾病管理センター)がアメリカ合衆国国民向けに作製したB群レンサ球菌感染症に関するリーフレット。CDCのウェブページを参考にして下さい。
  6. Group B Streptococcus: The Facts for Health Professionals; 21 June 2011 ; Group B Strep Support(GBSS) : 英国の民間組織GROUP B STREP SUPPORTが作製したB群レンサ球菌感染症に関する54ページの冊子。
  7. American Academy of Pediatrics and COID(Committee on Infectious Diseases)/COFN(Committee on Fetus ahd Newborn). Revised guidelines for prevention of eary-onset group B streptococcal (GBS) infection. Pediatrics 1997. 99:489-496.
  8. Decreasing Incidence of Perinatal Group B Streptococcal Disease -- United States, 1993-1995. ; MMWR. May 30, 1997/46(21);473-477.
  9. Anne Schuchat ; Epidemiology of Group B Streptococcal Disease in the United States: Shifting Paradigms.; Clinical Microbiology Reviews, July 1998, Vol. 11, No. 3, p. 497-513.
  10. Prevention of Perinatal Group B Streptococcal Disease: Revised Guidelines from CDC ; MMWR Recommendations and Reports ; August 16, 2002/Vol. 51/No. RR-11, p.1-22.(参考文献1の改訂版です。)
  11. Prevention of Perinatal Group B Streptococcal Disease: Revised Guidelines from CDC ; MMWR Recommendations and Reports ; November 19, 2010/Vol. 59/No. RR-10, p.1-32.(参考文献10の改訂版です。)
  12. Screening will save newborn lives: A case for the introduction of routine screening for group B Streptococcus in late pregnancy; 28 June 2012 ; Group B Strep Support(GBSS) : 英国の民間組織GROUP B STREP SUPPORTが作製したB群レンサ球菌感染症に関する9ページのパンフレット。
  13. Edmond KM, Kortsalioudaki C, Scott S, Schrag SJ, Zaidi AK, Cousens S, Heath PT. Group B streptococcal disease in infants aged younger than 3 months: systematic review and meta-analysis. Lancet. 2012 Feb 11;379(9815):p. 547-556.

2001年1月9日初掲載
2002年6月24日改訂
2003年3月13日改訂
2012年12月28日改訂増補

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横浜市衛生研究所 感染症・疫学情報課 - 2008年4月1日作成
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