横浜市トップページ > 健康福祉局 > 横浜市衛生研究所 > 横浜市感染症情報センター > 疾患別情報 > 水痘(水疱瘡)・帯状疱疹について
水痘(水疱瘡:みずぼうそう)・帯状疱疹(帯状ヘルペス)は、世界中で見られる感染症です。水痘は、温帯の地域では、冬・春の季節に発生が多く、2-5年おきに大きな流行があります。アメリカ合衆国では3-5月の発生が最高で9-11月の発生が最低です。熱帯の地域では、温帯の地域で見られるほどは、こどもでの発生は多くなく、大人では温帯の地域で見られるより発生が多いです。
横浜市では、水痘は、冬・春の発生が多く、秋の発生が少ないです。毎年同じような流行状況です。
水痘と同じウイルスによって起きる帯状疱疹は、年中発生し、季節による変動は少ないです。ただし、日光を受けやすい顔における帯状疱疹の発生は夏(7月・8月)に比較的多いとする研究もあり、夏に強い太陽光の中の紫外線の関与も考えられます(参考文献10)。紫外線の増加が水痘−帯状疱疹ウイルスを押さえ込んでいる免疫を抑制して帯状疱疹を発症している可能性も考えられます。
日本においては、水痘は、感染症法での5類の小児科定点把握疾患であり、全国約3000の小児科定点医療機関で患者発生が把握されています。届出基準はこちら(PDF版)です。2000-2006年の全国の小児科定点医療機関あたり水痘患者年間年齢別発生報告数は、下のグラフのとおりです。年齢別では1歳、2歳、3歳が多いです。0歳では生後6か月以降の発生が多いです。4歳以降、小児では年齢を重ねるとともに発生は減少します。一方、少ないですが20歳以上の発生報告もあります。
大部分のこどもにとって発疹の出現が水痘の一番最初の症状です。水痘の発疹は頭皮部分に最初に出現する場合が多いです。ついで、体幹部、最後に四肢に出現します。体幹部に最も密に出現します。発疹がわずかに出現する場合には、体幹部上部にのみ出現する場合が多いです。鼻・のどの粘膜、目の結膜・角膜、膣粘膜等にも発疹が出現することがあります。発疹は、赤い斑点から赤い丘疹、さらには水疱へと変化します。発疹は、通常赤くなった皮膚の上で、透明な液体を中に含んだ直径1-4mmの水疱となります。透明な液体の中には、水痘の病原体のウイルスが含まれています。水疱は破れるか化膿して、乾燥してかさぶたになります。発疹のいろいろな段階が同じ部位で混在している場合があります。のどの粘膜の水疱が破れると、飲食時に痛みを訴える場合があり、刺激物を避ける等の食事上の注意が必要な場合があります。最初の発疹の出現から5日までに、通常、新しい発疹は出現し終えます(患者の免疫力が低下しているときなどには、最初の発疹の出現から7日以上にわたって、新しい発疹が出現し続けることもあります)。最初の発疹の出現から6日までに大部分はかさぶたとなります。多くのかさぶたは、最初の発疹の出現から20日未満で消失します。発疹の数は個人差があり、2、3ヶ所の人もいれば、500ヶ所以上の人もいますが、平均300-400ヶ所です。
しばしば、発疹に、発熱・頭痛・気分不快を伴いますが、それらの症状は、大人でより重症で、最初の発疹の出現の1-3日前から出現することがあります。
水痘の合併症としては、水疱の細菌による感染が起こる場合があります。かゆみのために、患児が汚れた手で患部をひっかくことで水疱が細菌感染をおこしたり、傷を作ったりします。患児の手は清潔にして、爪はよく切っておいた方が良いでしょう。皮膚の感染を起こす細菌としては、黄色ブドウ球菌やA群β溶血性連鎖球菌などが見られます。
重症の水痘では、合併症として、肺炎が起きる場合があります。合併症として、心内膜炎、関節炎、肝炎、脳炎等の報告もあります。
水痘にかかった場合、こどもよりも大人で重症となりやすく、大人は、3-18倍、入院しやすく、11-20倍、肺炎となりやすく、1.1-2.7倍、脳炎となりやすいです。大人では、慢性肺疾患や喫煙があると肺炎になりやすいです。喫煙は止めましょう。
母親(妊産婦)が出産の5日前から2日後までに水痘を発病した場合、生まれた赤ちゃん(新生児)の17-30%で重症の新生児の水痘が見られます。この重症の新生児の水痘では、致死率は20-30%です。出産間際の感染では、母体が水痘の抗体を産生し胎児に伝えるのに十分な時間がないため、新生児は重症になりやすいと考えられます。
水痘の患者の致死率(患者数に対する死亡患者数の割合)は、大人で高く(大人患者10万人対で30人の死亡)、次いで赤ちゃんが中間(赤ちゃん患者10万人対で7人の死亡)、1-19歳のこどもで低くなっています(こども患者10万人対で1-1.5人の死亡)。アメリカ合衆国では、毎年水痘で約100人が死亡していますが、大人は、水痘の患者数では5%なのに対し、水痘による死亡者数では55%を占めます。カナダでは、1987-1996年に53人の水痘による死亡が報告されていますが、その70%が16歳以上です(参考文献18)。
まれなことですが、ライ症候群( Reye syndrome : オーストラリアの病理学者R.D.K.Reyeに因む)が、最初の発疹の出現から3-8日後に出現する場合があります。ライ症候群は、水痘及びインフルエンザのまれな合併症で、水痘及びインフルエンザの急性期に鎮痛解熱剤のアスピリンを服用していたこどもたちに多く見られます。ライ症候群は、5-16歳が大部分で、嘔吐と嗜眠から始まり譫妄・昏睡にいたり、致死率は20-30%、生存者では脳障害が残ります。ライ症候群の発生の仕組みはよくわかっていません。しかし、水痘及びインフルエンザでアスピリンを使用しなくなってから、ライ症候群の発生は減少しました。水痘ではアスピリン(アセチルサリチル酸)を使用してはいけません。感冒薬の中にアスピリンが含まれている場合もあるので注意しましょう。
妊娠中の女性が、妊娠28週以前に水痘に罹患した場合、先天性水痘症候群として、低体重出生児、四肢の形成不全、皮膚瘢痕、部分的筋肉萎縮、脳炎、小頭症、白内障等の児の異常を生じることがありますが、発生頻度は2%以下です。一番危険性が高いのが妊娠13-20週で、発生頻度が2%とする研究(参考文献5)があります。この研究では、妊娠中に帯状疱疹となった母親366人の赤ちゃんも観察されましたが、先天性水痘症候群は見られませんでした。
人から人への水痘の感染はたいへん起こりやすく、家族の一員が水痘に感染した場合には、家族の内、水痘に感染したことがない人(水痘に対する免疫がない人)の約90%が感染すると言われています。水痘は、水痘や帯状疱疹の患者の湿った病変部に触れた手を自分の鼻や口の中に持っていったり、水痘の患者の鼻やのどからの飛沫を吸い込んだりして、感染します。水痘の潜伏期は、10-21日、通常14-16日です。他の人への水痘の感染は、最初の発疹が出現する1-2日前から全部の水疱がかさぶたとなるまでの間に起こります。
生まれたときから水痘にかかる可能性がありますが、母親からの免疫で生後6か月までは水痘にかかりにくい児もいます。
A群β溶血性連鎖球菌が、通常存在しないところ、例えば、血液や筋肉や肺といった場所にまで、この細菌が入り込み、重症のA群β溶血性連鎖球菌感染症を引き起こすことがあります。その場合、侵襲性A群β溶血性連鎖球菌感染症と呼ばれます。侵襲性A群β溶血性連鎖球菌感染症となる危険因子としては、HIV感染症、ガン、糖尿病、アルコール依存、水痘などがあります。水痘については、水痘の皮膚病変が出現している間で危険が高いです。
水痘を二度、発病することは少ないですが、ありえます。1995-1999年のアメリカ合衆国カリフォルニア州のAntelope Valley(1995年の人口は303624人)における水痘の発生動向調査では、年間に発生した水痘患者の内、以前に水痘にかかったらしき者の割合は、4.5%(1995年、132人/2934人)-13.3%(1999年、78人/587人)でした。1回目の水痘の罹患が生後12か月未満などまだ小さい時であったり、1回目の水痘の症状が軽かったり、家族に水痘を二度発病した者がいるような場合には、水痘を二度発病することがより起こりやすいようです(参考文献19)。
水痘は、英語では、varicella あるいは、chickenpox と表記されます。varicella は、もともと、ラテン語でvariola(天然痘)の軽い形のものを示します。近代に入るまで水痘と天然痘とは明確な区別はされていませんでした。chickenpox についても、smallpox(天然痘)にくらべれば、たいしたことがないという意味でchickenと言う言葉が使われたようです。サル等が感染するサル痘(monkeypox)や牛が感染する牛痘(cowpox)のように、ニワトリ(chicken)が感染するわけではありません。pox は、水疱性疾患を示します。他には、梅毒がgreat pox(French poxあるいはSpanish poxとも)と呼ばれますが、15世紀にこの梅毒と区別して天然痘がsmallpoxと呼ばれるようになりました。
また、chickenpox については、現代では英語でchickpea(ヒヨコマメ: Cicer arietinum)と呼ばれている古代ローマ時代からすでに食用とされている豆と水痘の皮膚病変の形態との類似から、chickenと言う言葉が使われたの説もあります。chickpeaについては、ラテン語でcicerであり、プルターク著『英雄伝』(対比列伝)のキケロ伝によれば、先祖に鼻の端にかすかなへこみがあり、この豆の割れ間のように見えた者がいたことから古代ローマの政治家キケロ(Marcus Tullius Cicero : 紀元前106年1月3日生まれ、紀元前43年12月7日死去。)の家名(キケロ : Cicero)は由来するとされます(なお、キケロが政治の世界に入る時、友人たちは、キケロ[ひよこ豆]という家名を捨てて他の家名とすることをキケロに勧めました。キケロは、「Scaurus[腫れた足首]家やCatulus[子犬]家のように栄誉ある家名にしてみせる」と言って元気に断ったとのことです)。英国では、このラテン語のcicer由来のcich-peaseが18世紀にchick-peaと表記されるようになったとされます。chickenpox という初めての表記は、すでに17世紀の1694年に認められることから、このchickpea由来とする説は否定的です。
水痘の病原体は、varicella-zoster virus (VZV:水痘−帯状疱疹ウイルス)です。VZVは水痘と帯状疱疹(帯状ヘルペス)との二つの病気に関わるウイルスです。VZVは、(ヒト)ヘルペスウイルス(HHV)の仲間で、ヒトヘルペスウイルス3型(HHV-3)とも呼ばれます。他のヘルペスウイルスの仲間と同様に、最初の感染(水痘)が治っても、体内で潜在感染を続けることが知られています。水痘は、発疹が出現してから1、2週間で治りますが、VZVが体内からすべて消滅するわけではありません。水痘が治った後も、感覚に関与する神経節にVZVは休眠状態で存在します。そして、その休眠状態からVZVが再活性化して帯状疱疹が発病することがあります。ときどき休眠状態から再活性化するVZVがあるとしても、免疫の働きで通常は抑え込まれてしまって帯状疱疹は発病しません。ところが、高齢やエイズ、長期のステロイド剤投与などで免疫力が落ちたときには、VZVの再活性化を抑え込めず、帯状疱疹が発病してしまう場合があります。アメリカ合衆国での帯状疱疹の発生は年間100万人と推計されています。白人の方が黒人より帯状疱疹になりやすいです。アメリカ合衆国では、一生涯の間に帯状疱疹になる確率は32パーセントと推計されています。
帯状疱疹の第一番目の症状は、痛みです。VZVが潜伏していた神経節でVZVが再活性化することによって神経が傷害され起こります。70-80%の患者で痛みが皮膚病変に先行して、後に出現する皮膚病変の部位で痛みが出現します。痛みは、軽いかゆみ、ひりひりした痛みあるいは強い痛みの場合もあります。VZVは潜伏していた神経節から感覚に関わる神経を皮膚まで下降し、皮膚で増殖することで皮膚病変が出現します。痛みが出現して5日以内に、痛みの部位の皮膚の発赤・腫脹と透明な水疱が出現します。病変は体の片側にとどまり、体の正中線は超えません。水疱は集団となって出現し、感染した感覚に関わる神経の支配する皮膚の領域(皮膚分節:dermatome)に出現するので、全体では帯状の分布を示すことがあり、帯状疱疹の名があります。水疱の内容には、VZVが含まれているので注意しましょう。病変部の水疱の内容中のVZVの周囲への拡散を防ぐために、病変部は包帯などで被覆することが大切です。通常2-4日間新しい水疱が出現し続け、14日以内に水疱は膿疱となり堅く乾燥します。この時点でVZVは病変部から消えます。一週間を超えて新しい水疱が出現し続けるようなら、免疫不全も疑われます。合併症としては、病変部に細菌感染を起こすことがあります。また、帯状疱疹が治った後も、神経痛が残ることもあり帯状疱疹後神経痛(PHN:postherpetic neuralgia)と呼ばれます。帯状疱疹後神経痛は、数ヶ月から数年続くこともあります。帯状疱疹については、有効な抗ヘルペスウイルス薬(アシクロビル:acyclovir)を早めに使った方が良いです。皮膚病変が出始めてから72時間以内に有効な抗ヘルペスウイルス薬の投与を開始できれば、症状を緩和したり有症状期間を短縮する効果は大きいと考えられています。
まだ皮膚病変が出現しない痛みだけの時期に、帯状疱疹と診断することは難しいです。痛みの部位や性状によって、尿路結石、胆石、心筋梗塞、急性虫垂炎など他の疾患の可能性もあります。特徴的な皮膚病変が出現して初めて帯状疱疹と診断されることが多いです。
帯状疱疹では、発熱、頭痛、気分不快、疲労感などの全身症状も20%未満で見られます。
イギリスのチェルトナム(Cheltenham)のチェルトナム総合病院で1978年から1986年までの間に診療した1019人の帯状疱疹患者について分析した研究があります(参考文献11)。性別については、女性が60%、男性が40%でした。年齢は9歳から96歳までで、平均年齢は58歳でした。病変が体の左右のどちら側に存在するかは、左側が52%、右側が48%でした。病変が出現した感覚に関わる神経の支配する皮膚の領域(皮膚分節:dermatome)については、胸髄神経が支配する皮膚の領域(T1からT12までの12の皮膚分節)内が56%、頸髄神経が支配する皮膚の領域(C1からC8までの8の皮膚分節)内が17%、三叉神経(第V脳神経)が支配する皮膚の領域(V:主に顔面)内が12%、腰髄神経が支配する皮膚の領域(L1からL5までの5の皮膚分節)内が10%、仙髄神経が支配する皮膚の領域(S1からS5までの5の皮膚分節)内が5%でした。発生には季節変動が見られ(P<0.001)、夏(6月21日から9月22日まで)に多く、春(3月20日から6月20日まで)に少なかったです。
帯状疱疹を発病する小児は少ないですが、胎児や乳児のときにVZVに感染したことがある小児などで、帯状疱疹の発病が見られることがあります。妊娠13-24週に母親が水痘に罹患した場合にこどもの0.8%で、妊娠25-36週に母親が水痘に罹患した場合にこどもの1.7%で、帯状疱疹の発病が見られました。
帯状疱疹を二度、発病することは少ないですが、ありえます。後述の、アメリカ合衆国の60歳以上用の帯状疱疹のワクチンの効果を見るための、60歳以上の38,546人を対象とした調査研究では、延べ984人の帯状疱疹患者の発生が確定されましたが、この中には、観察期間内に帯状疱疹を二度発病した人が3人いました(参考文献17)。
帯状疱疹における神経の傷害は、感覚に関わる神経の傷害が主ですが、筋肉の運動麻痺など、運動に関わる神経の傷害も5-15%で見られることがあります。
外耳道の感覚や表情筋の動きにも関わる顔面神経(第7脳神経)の神経節である膝神経節に潜在するVZVが再活性化して顔面神経麻痺を起こす場合もあると考えられています。顔面神経麻痺の内、耳介後部の痛みの出現の数時間後に片側の顔面の表情筋の麻痺が出現するベル麻痺(Bell's palsy)については、単純ヘルペスウイルスやVZVの再活性化によるものも含まれていると考えられています。単純ヘルペスウイルスやVZVに有効な抗ウイルス剤であるアシクロビルなどがベル麻痺の治療に用いられることがあります。また、VZVの再活性化が顔面神経(第7脳神経)に留まらず近接の内耳神経(第8脳神経)をも傷害し、外耳道や耳介に水疱が出現した場合には、ラムゼー・ハント症候群(Ramsay Hunt syndrome)と呼ばれます。片側の顔面の表情筋の麻痺、めまい・難聴なども見られます。VZVに有効な抗ウイルス剤であるアシクロビルなどがラムゼー・ハント症候群の治療に用いられることがあります。
なお、ベル麻痺(Bell's palsy)の回復過程において、傷害された顔面神経の神経線維の再生に誤りを生じ、顔面上部の表情筋を支配する神経線維が顔面下部の表情筋を支配したり、また、顔面下部の表情筋を支配する神経線維が顔面上部の表情筋を支配したり、あるいは、唾液分泌を支配する神経線維が涙腺分泌を支配したりするようなことが起こることがありえます。患者本人が意図する動き以外の筋肉の動きを伴う場合、「共同運動 (synkinesia)」 と言います。また、飲食時の唾液分泌に顔面神経麻痺を起こした側の眼の涙を伴ってしまう場合は、「ワニの涙症候群(crocodile tears syndrome あるいは、Bogorad's syndrome ; F. A. Bogorad はロシアの神経病理学者です。1928年にBogoradが症例報告し初めてワニの涙と記述しました。ワニの涙は、感情を伴わない涙の文学的表現です。昔、欧州では、ワニは生き物を捕らえ、むさぼり食う際にあたかも偽善的に涙を流すと思われていました。)」と言うことがあります。
帯状疱疹は、英語では、shingles 、zoster 、herpes zoster などと表記されます。shingles は、帯(girdle)を意味するラテン語の cingulus に由来します。zoster は、帯(girdle)を意味するギリシア語の zoster に由来します。
水痘には、予防接種(ワクチン)があります。1歳以上で受けれますが、任意接種ですのでかかりつけの医師に相談しましょう。
水痘ワクチンは、日本で開発され、1988年に日本と韓国で認可されました。アメリカ合衆国では、健康なこども及び大人への使用が1995年に認可されました。アメリカ合衆国では、生後12-18か月の間に1回受ける定期予防接種となりました。この間に受けれなかった場合には、できるだけ早く、12歳までに受けることが勧められました。なお、生後12か月から12歳までは、水痘ワクチン1回接種で97%で水痘に対する抗体の値が上がるのに対して、13歳以上では1回接種で78%、4-8週間間隔での2回接種で99%で水痘に対する抗体の値が上がります。このため、アメリカ合衆国では、13歳以上で初めて水痘ワクチンを受ける場合には、少なくとも4週間以上間隔をあけての2回接種が勧められました。
アメリカ合衆国では、1995年3月の水痘ワクチン認可より前には、概数では、毎年400万人が水痘にかかり、毎年13500人が水痘で入院し、毎年150人が水痘で亡くなっていました。水痘ワクチンの普及に伴い、1995年から2001年にかけて、水痘の入院は、72%減少しました。しかし、一方で、水痘ワクチンを受けた学童たちの間での、水痘の集団発生が起こり続けました。それらの集団発生では、予防接種を受けたこどもの11-17%が水痘を発病しました。予防接種を受けたこどもの症状は通常は軽いものですが、重症になりやすい周囲の大人などを感染させる恐れがあります。一回の予防接種だけでは、15-20%のこどもは十分な免疫を獲得できず、重症になりやすい大人までの免疫の保持も難しいと考えられました。そこで、2006年6月、アメリカ合衆国の予防接種勧告委員会(ACIP)は、4-6歳での2回目の水痘予防接種を勧告し、2007年以降のアメリカ合衆国のこどもの定期予防接種では水痘については、二回接種とされました。一回目は生後12-15か月に、二回目は4-6歳に接種されます。
なお、アメリカ合衆国では、13歳未満で水痘ワクチンの二回接種を受ける場合については、少なくとも3か月以上間隔をあけることが勧められています。ただし、アメリカ合衆国の予防接種勧告委員会(ACIP)の勧告では、少なくとも3か月以上間隔をあけての二回接種が推奨されるものの、間隔が3か月未満であっても28日以上の間隔の二回接種であれば有効とされ、新たに三回目の接種をする必要はないとされています(参考文献4)。
水痘ワクチンは、生ワクチンであり、生きている弱毒水痘ウイルスを含んでいます。弱毒ウイルスとは、そのウイルスに感染しても、ほとんど症状を示さないことを意味します。症状をほとんど示さないけれども、免疫はきちんと獲得されるため、生ワクチンとして使用されるわけです。水痘ワクチンが水痘の潜伏期に接種されることがあります。水痘に感染の機会があってから72時間(3日)以内に水痘ワクチンを接種すれば、70-100%で水痘の発病を防止できるとされています。水痘に感染の機会があってから5日以内に水痘ワクチンを接種した場合でも、水痘の発病を防止できる可能性はありえるようですが、水痘の発病防止のためには水痘に感染の機会があってから3日以内の早期の接種が望ましいです。
水痘にかかったら、職場や学校を休んで、通院以外は外出を控えましょう。学校保健法での登校基準は、「すべての発疹が痂皮化するまで出席停止とする。ただし、病状により伝染のおそれがないと認められたときはこの限りではない。」となっています。
水痘ワクチンの接種を受けた人は十分な免疫力を獲得・保持して、水痘を発病しないことが期待されます。ところが、水痘ワクチンの接種を受けていても、発病を防ぐのに十分な免疫力が獲得・保持されず、水痘を発病してしまうようなこともあり、軽い症状で発病した場合には、修飾水痘( modified varicella )と言われます。修飾水痘では、典型的には、発熱は無いか微熱で、発疹は50ヶ所未満で水疱よりは斑状丘疹が中心となります。修飾水痘でも感染力はありますので注意が必要です。
また、2005年9月、アメリカ合衆国では、生後12ヶ月から12歳までのこども用の混合ワクチンが認可されました。麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、水痘のワクチンが混合されたMMRVワクチン( a combination measles、 mumps、 rubella、 and varicella vaccine )です。
なお、2006年5月25日、アメリカ合衆国で60歳以上用の帯状疱疹のワクチン( Zostavax )が認可されました。弱毒の varicella-zoster virus (VZV:水痘−帯状疱疹ウイルス)を使った生ワクチンですがこどもの水痘予防には使えません。アメリカ合衆国で認可されている水痘ワクチン(Varivax)と同じ弱毒の水痘−帯状疱疹ウイルスの Oka/Merck 株が使われています。但し、ワクチン株のウイルスの量が、水痘ワクチン(Varivax)が1350PFU(plaque forming units)以上、帯状疱疹ワクチン( Zostavax )が19400PFU以上と、帯状疱疹ワクチン( Zostavax )で多いです。60歳以上の38,546人を対象とした調査研究では、帯状疱疹のワクチン接種を受けた60歳以上の人たちで、帯状疱疹の発生を約半数(51%)減少させたとのことです。効果は60-69歳の人で最も強く見られ、64%の帯状疱疹の発生の減少が見られました。年齢層が高くなるにつれて効果は弱くなり、70-79歳の人で41%、80歳以上の人で18%の帯状疱疹の発生の減少でした。また、帯状疱疹が治った後に見られることがある帯状疱疹後神経痛については、ワクチン接種を受けなかった60歳以上の人たちで帯状疱疹となった人の12.5%に見られましたが、ワクチン接種を受けた60歳以上の人たちでは帯状疱疹となった人の8.6%に見られました。ワクチン接種を受けていた方が、帯状疱疹を発病した場合でも、帯状疱疹後神経痛(PHN:postherpetic neuralgia)の発生が少なかったです。
アメリカ合衆国においては、60歳以上の成人に対しての帯状疱疹ワクチンの1回接種が勧告されています(参考文献9,21)。なお、妊娠中や免疫不全の場合などには、接種できません。また、アメリカ合衆国国内で水痘ワクチン(Varivax)を帯状疱疹ワクチン( Zostavax )の代用とすることはできません。アメリカ合衆国で認可されている水痘ワクチンであるVarivaxについては、アメリカ合衆国で帯状疱疹のワクチンとしては認可されておらず、アメリカ合衆国で帯状疱疹のワクチンとして認可されているZostavaxを、アメリカ合衆国国内では使うことになります。一方、日本においては、このZostavaxは認可されておらず、帯状疱疹予防の効果が水痘ワクチンに期待されています。
2000年9月27日初掲載
2001年1月19日増補
2007年1月12日改訂増補
2007年6月29日改訂増補
2008年7月9日改訂増補
2008年8月4日改訂増補
2008年9月19日改訂増補
2008年11月4日改訂増補
2009年3月9日増補