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セレウス菌による食中毒について

流行は?

 平成13年(2001年)12月1日(土)、九州のある保育園でもちつき大会がありました。このもちつき大会であんモチなどを食べた園児ら多数が嘔吐などして受診したというニュースが新聞・テレビ等で報じられました。新聞報道などによれば、もちつき大会の参加者は、441人で、その内、嘔吐などの症状を示した人は344人でした。園児らは、あんモチなどを食べてから30-60分で嘔吐し始めました。あんモチなどを食べてから、嘔吐の症状が起こるまでの時間が短かったことから、ブドウ球菌やセレウス菌などによる毒素型の食中毒などが疑われました。当地の衛生部局は、あんやモチ、吐物などを細菌検査し、145検体の内63検体からセレウス菌を検出しました。ブドウ球菌も検出されました。さらに、毒素の検査を行ったところ、41検体の内、11検体でセレウス菌の嘔吐型毒素を検出しましたが、ブドウ球菌の毒素は検出されませんでした。このことなどから、当地の衛生部局は、この保育園の集団嘔吐は、セレウス菌による食中毒であるとしました。あんからセレウス菌が検出されていてることから、小豆をゆでた後長時間室温で放置した間にセレウス菌が増殖し毒素を産生したと考えられました。

 平成11年(1999年)の全国の食中毒事件は、総数2697件で、35214人の患者が発生しました。そのうち、セレウス菌による食中毒は、11件(全体の0.4%)で、患者総数は、59人(全体の0.2%)です。セレウス菌による食中毒は、季節的には、夏季に多く、平成11年の場合、11件中の5件が8月の発生でした。10人以上の患者が発生したセレウス菌による食中毒は、3件あり、原因食品は、1件がオムライス、1件がおにぎり、もう1件がチャーハンでした。平成11年の全国の食中毒事件では、原因食品が「穀類及びその加工品」であるものが全部で19件あるのですが、1位がブドウ球菌の10件、そして2位がセレウス菌の5件でした。セレウス菌による食中毒は、日本では、穀類関連の食中毒に多いようです。

 アメリカ合衆国では、1993年の7月21日、バージニア州で、2箇所の保育園で、集団で胃腸症状を起こした事件があります。レストランなどから配食された食事を80人中67人が食べました。チキンライスを食べた48人中14人(29%)が胃腸症状を起こしましたが、チキンライスを食べなかった16人では0人(0%)が胃腸症状を起こしました。3人はチキンライスを食べたか食べなかったかよくわかりませんでした。残ったチキンライスとこどもの吐物とからセレウス菌が分離され、チキンライスが原因食品のセレウス菌による食中毒事件と考えられました。胃腸症状は、嘔吐した人を患者とした場合、患者では、嘔吐が100%で、吐き気が71%で、腹痛が36%で、下痢が14%で見られました。潜伏期間は1.5-3.5時間でした。症状は発症から1.5-22.0時間で消失しました。ごはんは、7月20日の夜たかれた後冷蔵するまでレストランで室温に放置されていました。7月21日の朝、調理した鶏肉と一緒にごはんは鍋でいためられチキンライスとなり、冷蔵することなしに保育園に午前10時30分頃配達されました。チキンライスは保育園で再加熱されることなく、12時に食卓に出されました。どんな食べ物も室温で放置しないこと、食べ物は5度より低いか60度より高いかの適切な温度で保管すること、および、食べ物の温度を測る温度計を使用することなどを事件後、当事者の保育園とレストランとに、当地の衛生部局は指導しました。チャーハンやいためごはんが原因食品となっている場合については、ご飯を室温で長時間放置する間にセレウス菌が増殖して毒素を産生してしまうようです。嘔吐型毒素は加熱してもこわれにくいので、食前の加熱では予防できません。

どんな病気?

 セレウス菌は、増殖に伴って、2種類の毒素を産生します。嘔吐型毒素と下痢型毒素です。セレウス菌による食中毒では、嘔吐型と下痢型の2種類の症状が見られ、嘔吐型毒素が嘔吐型の症状を、下痢型毒素が下痢型の症状を起こしていると考えられます。

 嘔吐型の症状は、食後30分から6時間で嘔吐が出現します。ときどき、腹痛や下痢が見られる場合もあります。通常は発熱は見られません。嘔吐型の症状は、24時間未満に収まるのが通常です。黄色ブドウ球菌による食中毒で見られる嘔吐症状とたいへん似ています。嘔吐型毒素は加熱してもこわれにくいので、食前の加熱では予防できません。嘔吐型毒素は126度で90分加熱しても安定です。嘔吐型の集団発生の報告は、1971年以来、英国、カナダ、オーストラリア、ネーデルランド、フィンランド、アメリカ合衆国、日本でなされています。

 下痢型の症状は、食後6-15時間で、水のような下痢、腹痛が出現します。吐き気を伴うことがありますが、嘔吐や発熱はまれです。症状は24時間は持続します。ウエルシュ菌による食中毒とよく似ています。下痢型毒素は、45度で30分の加熱には安定ですが、56度で5分の加熱には安定ではありません。下痢型毒素は加熱によってこわれやすいので、食前の十分な加熱が予防に役立ちます。下痢型の集団発生の報告は、1950年以来、ノルウェイ、デンマーク、イタリア、ネーデルランド、ハンガリー、スウェーデン、ポーランド、ルーマニア、旧ソ連、アメリカ合衆国、ドイツ、カナダでなされています。

 セレウス菌による食中毒の原因食品としては、下痢型の場合には、肉、ミルク、野菜、魚などいろいろな食物が原因となる場合があります。嘔吐型の場合には、お米と関係している場合が多いです。イモ、メン類、チーズ製品といったデンプンを含む食物が関係している場合もあります。これらのものが混じっているソース、プディング、スープ、メン類、サラダ、鍋焼き料理などが関係する場合もあります。イギリスの刑務所で起こった嘔吐型の集団発生の場合には、ビーフシチューが原因食品でした。前の日に調理した野菜をシチューに入れたのが原因となったと考えられています。

 抗生物質としてセレウス菌が感受性があるのは、クロラムフェニコール、アミノグリコシド、バンコマイシン、クリンダマイシン、エリスロマイシンです。しかし、抗生物質を使用しなくても対症的に脱水に対する点滴などの治療をしているだけで短期間のうちに軽快するので、抗生物質が使用されることは少ないです。

 セレウス菌による食中毒は、通常、人から人へは感染しません。なお、免疫が抑制された人たちでは、セレウス菌は、菌血症、心内膜炎、髄膜炎、肺炎を起こすことがあるので注意が必要です。また、セレウス菌は、外傷後の眼内炎とも関係するとされています。

病原体は?

 Bacillus cereus が病原体です。Bacillus は、桿状菌の意味です。 cereus は、例えば、Ceres(シアリーズあるいはケレス)は、ギリシア神話のデメテルにあたり、ローマ神話で農業、穀物の女神です。また、cereals(シアリアル)は英語で穀物の意味です(最近は「シリアル」で日本語として通じることもあります)。Bacillus cereus では、穀物の桿状菌というようなことになります。また、英語での、cereus の発音はserious(深刻な、シリアスな)と同じなので、この菌の名前は、ちょっと深刻な「シアリアス」菌となりそうですが、日本語では、セレウス菌となっています。

 セレウス菌は、どこでも見られる土の中の菌です。嫌気性菌で、厳しい環境下では、芽胞を形成して生き延びます。この芽胞は、熱にも比較的強く、調理中に加熱しても生き残る可能性があります。セレウス菌は、生の食物、乾燥した食物、貯蔵している食物などにわずかに認められることがあります。アメリカ合衆国では、米からはセレウス菌が高率に検出されています。セレウス菌で汚染されている食物を臭いや見かけで判別することはできません。セレウス菌による食中毒となるためには食物1グラムあたり100万個以上のセレウス菌が必要だと考えられています。しかし、このセレウス菌の必要量は、そのセレウス菌の性状や産生した毒素の質・量、食べる人の感受性などの要因によってかなり増減すると考えられます。また、セレウス菌は、健康な成人の10%で腸管の中に見出されます。

 セレウス菌は、2%のグルタルアルデヒド、5%の次亜塩素酸ナトリウムで不活化しますが、十分な接触時間が必要です。また、セレウス菌は、100度で10分の加熱で大部分が不活化しますが、一部芽胞が生き残るかもしれません。

 セレウス菌が食中毒の病原体であることを明らかにしたのは、ノルウェイのSteinar Hauge です。1950年のことでした。1947-1949年に4回の総計で600人の食中毒事件を Hauge は調査し、セレウス菌の芽胞に富むコーンスターチから作ったバニラソースが共通の原因と考えました。この原料のコーンスターチは1グラムあたり10000個程度のセレウス菌の芽胞を含んでいました。バニラソースは前日に作られそのまま室温に放置され翌日食べられていました。このバニラソースを食べた人は全て食中毒を起こしていました。セレウス菌が食中毒の病原体であることを明らかにするため、Haugeは、分離したセレウス菌を1ミリリットルあたり400万個まで培養し、この培養液200ミリリットルを飲み干しました。飲み干してから13時間後、Haugeに食中毒症状が現れました。

 全部で23の血清型が知られていますが、嘔吐型については、血清型の1型と関係しているようです。

予防のためには・・・

 セレウス菌の食中毒になっても免疫はつきません。何度でもセレウス菌の食中毒になる可能性があります。

 以下のことに気をつけましょう。5-60度では、セレウス菌が増殖して毒素を産生する恐れがあります。

1.食べ物を室温で保管するのは避けましょう。食べ物を高温で保管する場合には、60度より高い温度で保管しましょう。食べ物を低温で保管する場合には、5度より低い温度で保管しましょう。

2.熱くなっている食物を冷やして保管しようとする場合には、小分けにして速く冷やすようにしましょう。深さが10センチメートル未満(濃厚な食物の場合には7.6センチメートル未満)の小さな容器に入れて冷蔵しましょう。

3.食べ物を食前に再加熱する場合には、速やかに74度以上に加熱しましょう。

4.直接にも間接にも、加熱前の生の食品と加熱後の食品とが接触しないようにしましょう。まな板・包丁・皿などを別にするなどの工夫が必要です。

5.料理などで使用する前に果物や野菜は水道水で徹底的に洗い流しましょう。

6.料理や食事の前、トイレの後などには、手をよく洗いましょう。

参考文献

  1. 平成11年全国食中毒事件録 平成13年12月 厚生労働省医薬局食品保健部監視安全課
  2. Bacillus cereus -- Maine. ; MMWR. : 35(25):408-10; June 27, 1986.
  3. Epidemiological Notes and Reports Bacillus cereus Food Poisoning Associated with Fried Rice at Two Child Day Care Centers -- Virginia, 1993. ; MMWR. : 43(10):177-8; March 18, 1994.

2002年1月15日掲載

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横浜市衛生研究所 感染症・疫学情報課 - 2008年4月1日作成
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