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アスペルギルス症について

流行は?

 アスペルギルス症(aspergillosis)は、カビの一種であるアスペルギルス(Aspergillus )によって起こされる病気です。免疫に問題がある人がアスペルギルス(Aspergillus )の分生子(conidia)を多量に吸い込んだような場合、アスペルギルス(Aspergillus )が感染を起こすことがあります。健康な人に対しては感染を起こさず、日和見(ひよりみ)感染の一つと考えられます。
 アスペルギルス(Aspergillus )の分生子(conidia)が多量に飛散するような場合、例えば、建物の改築・建築等に伴ってアスペルギルス症(aspergillosis)が発生することがあります。また、医療器具がアスペルギルス(Aspergillus )で汚染して、アスペルギルス(Aspergillus )の皮膚感染が集団発生したことがあります。
 アスペルギルス症(aspergillosis)は、アメリカ合衆国の西海岸のサンフランシスコでの調査によれば、10万人あたり年間1−2人の発生とされます。

どんな病気?

 アスペルギルス症(aspergillosis)は、カビの一種であるアスペルギルス(Aspergillus )によって起こされる病気です。アスペルギルス症(aspergillosis)には、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA : allergic bronchopulmonary aspergillosis)と侵襲性アスペルギルス症(IA : invasive aspergillosis)とがあります。
 アレルギー性気管支肺アスペルギルス症では、咳や喘鳴などのアスペルギルスによるアレルギー性の呼吸器症状が見られます。
 侵襲性アスペルギルス症では、免疫に問題がある人で、主に肺において、アスペルギルスが組織を侵し破壊します。肺における侵襲性アスペルギルス症では、発熱、胸痛、咳、息切れ等が見られます。ただし、発熱はステロイド剤を使用している人では見られないこともあります。アスペルギルスは、肺以外の組織を侵すこともあり、全身の組織に広がることもあります。脳や皮膚や骨、肝臓、腎臓を侵すこともあります。免疫に問題がある人とは、例えば、骨髄移植や臓器移植を受けた人、ステロイド剤を多量に使用している人、白血病や悪性腫瘍に対する化学療法を受けている人、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染している人、血液中の好中球が少ない人、慢性肉芽腫症(CGD : chronic granulomatous disease)で見られるような好中球の働きに障害がある人などです。侵襲性アスペルギルス症の進行は、速い場合には、発病から1-2週間で死に至ることがあります。
 アスペルギルス(Aspergillus )は、環境中によく見られ、多くの人は毎日のように、アスペルギルス(Aspergillus )の分生子(conidia)を吸い込んでいます。アスペルギルス(Aspergillus )の分生子(conidia)を吸い込んでも、免疫に問題がない人では、何も起こりません。しかし、免疫に問題がある人がアスペルギルス(Aspergillus )の分生子(conidia)を多量に吸い込んだような場合、アスペルギルス(Aspergillus )が感染を起こすことがあります。
 アスペルギルス(Aspergillus )は、肺や副鼻腔などにアスペルギルス腫(aspergilloma)を形成することがあります。アスペルギルス腫(aspergilloma)は胸部X線写真やCT検査などで球形の形状として認められることがあり、真菌球(fungus ball)と呼ばれることがあります。肺アスペルギルス腫(lung aspergilloma)は、肺気腫や結核の既往歴のある人で見られることがありますが、無症状のことが多く、時として血痰・喀血が見られます。
 アスペルギルス症(aspergillosis)の潜伏期間は、感染を受ける人の免疫状態や病原体のアスペルギルス(Aspergillus )の暴露状況によって影響を受けます。
 侵襲性アスペルギルス症(invasive aspergillosis)の治療には、ボリコナゾール(Voriconazole [VRCZ])、ミカファンギンナトリウム(Micafungin [MCFG])、イトラコナゾール(Itraconazole [ITCZ])などの抗真菌薬が使われます。免疫を抑制する薬剤の投与を受けている場合には、免疫を抑制する薬剤の投与の中止や減量も考慮されます。

病原体は?

  病原体であるアスペルギルス(Aspergillus )はカビの一種です。私たちの周囲の環境中によく見られます。土の中に見られ、植物に付着していたり、堆肥などの植物の腐敗したものにも見られます。家の中の塵(ちり)に見られることもあります。アスペルギルスはさまざまな種類が見られますが、人間のアスペルギルス症の原因として、主なものとしては、Aspergillus fumigatus Aspergillus flavus 、少ないものとしては、Aspergillus terreus Aspergillus nidulans Aspergillus nigar 、まれなものとしては、Aspergillus ustus などがあります。人間のアスペルギルス症の原因としては、Aspergillus fumigatus が90%を占めて多いです。Aspergillus fumigatus は、肺の侵襲性アスペルギルス症の病原体としてよく見られます。Aspergillus flavus は、肺以外の侵襲性アスペルギルス症の病原体としてよく見られます。
 アスペルギルス(Aspergillus )の分生子(conidia)は空気中に一時に多量に放出されますが、Aspergillus fumigatus の分生子(conidia)の直径は2-3マイクロ・メーターと小さく、吸い込まれると、気道の終末である肺胞までたどり着く可能性があります。Aspergillus flavus Aspergillus nigar などの分生子(conidia)はより大きく、気道の終末である肺胞までほとんどたどり着かず、上気道で粘膜の繊毛により排除されます。人間は一日あたりAspergillus fumigatus の分生子(conidia)を少なくとも数百吸い込んでいるとする調査研究もあります。そこで、アスペルギルス(Aspergillus )は主として肺で、まず感染を起こすことになります。また、喀痰からアスペルギルス(Aspergillus )が検出された場合、病巣からのアスペルギルス(Aspergillus )ではなく、単に吸い込まれたアスペルギルス(Aspergillus )である可能性もあります。肺にアスペルギルス腫(真菌球)が認められても痰にはアスペルギルス(Aspergillus )が検出されない場合もあります。
 Aspergillus fumigatus の成長は速く、摂氏25度でCzapek-Dox培地でコロニーの直径が4cm(±1cm)に一週間以内に達します。熱い環境下でも強く、摂氏55度でも生育し、摂氏70度でも生き残ります。Aspergillus fumigatus は、人間の体温の摂氏37度程度でよく生育し、草木の腐敗でよく生じる摂氏50度以上の高温でも、他の病原性のあるアスペルギルス(Aspergillus )属の種よりも、よく耐えます。
 アスペルギルス(Aspergillus )属には約200の種がぞくしています。アスペルギルス(Aspergillus )属の種の中には、その酵素の働きにより、食品や薬品等の製造に役立っている種もあります。Aspergillus terreus は、コレステロールを低下させるlovastatinという薬品の製造に役立っています。Aspergillus nigar は、クエン酸やアミラーゼ等の製造に役立っています。Aspergillus oryzae (ニホンコウジカビ:oryzae については、米麹から発見されたことから稲の学名のOryza 属に由来します)は、日本において、大豆・米等を原料にして醤油・味噌・酒(sake)等の製造に役立っています。一方、Aspergillus flavus Aspergillus parasiticus は、収穫物をアフラトキシン(aflatoxin)で汚染することがあります。アフラトキシン(aflatoxin=A[spergillus]+fla[vus]+toxin[毒素])は、免疫抑制力を持つ毒性の強い発癌物質です。アフラトキシン(aflatoxin)で汚染された収穫物を摂取しての重症患者や死者の発生が主に発展途上国で見られます。
 アスペルギルス(Aspergillus )は、ラテン語のaspergillumに由来します。ラテン語のaspergillumは、教会での礼拝式で使われる聖水を撒くための器具です(なお、aspergillumはラテン語で「散布する」の意味のaspergereに由来します)。下の図1を参照してください。顕微鏡下でアスペルギルス(Aspergillus )の一本の分生子柄(conidiophore)に多くの分生子(conidia)が一つの塊状に生っている形状とその器具の形状とが似ていることと、聖水が散布されるように分生子(conidia)が散布されることとから命名されたものと思われます。アスペルギルス(Aspergillus )は、1729年にイタリアの生物学者Pier Antonio Micheliが最初に記述しましたが、Micheliは司祭でもありました。Micheliはカビについて研究し、カビが自然発生するわけではなく、分生子から生長することを示しました。

図1: aspergillum一例模式図

予防のためには・・・

 アスペルギルス症(aspergillosis)の病原体であるアスペルギルス(Aspergillus )は私たちの周囲の環境中によく見られるため、アスペルギルス(Aspergillus )と全く接触しないようにすることは困難です。しかし、免疫が抑制された人々では、アスペルギルス(Aspergillus )との接触を避けることが望まれます。埃(ほこり)っぽい環境は避けましょう。建築現場など埃(ほこり)への暴露がありえる場所では、N-95マスクのようなアスペルギルス(Aspergillus )の分生子(conidia)が通過しないマスクを着用しましょう。ガーデニングのような土との接触も避けましょう。HEPAフィルターを用いた空気の清浄も望まれます。アスペルギルスの大量の暴露が考えられる場合などには、感染予防のために抗真菌薬を投与することも考慮されます。

参考文献

  1. JEAN-PAUL LATGE´, Aspergillus fumigatus and Aspergillosis, CLINICAL MICROBIOLOGY REVIEWS, Apr. 1999, Vol. 12, No. 2, p. 310-350.
  2. Taylor R. T. Dagenais and Nancy P. Keller, Pathogenesis of Aspergillus fumigatus in Invasive Aspergillosis, CLINICAL MICROBIOLOGY REVIEWS, Jul. 2009, Vol. 22, No. 3, p. 447-465.
  3. Anil A. Panackal, Alexander Imhof, Edward W. Hanley, and Kieren A. Marr; Aspergillus ustus Infections among Transplant Recipients; Emerging Infectious Diseases, Vol. 12, No. 3, March 2006, p. 403-408.

2011年8月4日掲載

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横浜市衛生研究所 感染症・疫学情報課 - 2011年8月4日作成
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