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アルゼンチンのこどもの定期予防接種について

こどもの定期予防接種のアルゼンチンと日本との違いについて

 本稿では、アルゼンチン(亜爾然丁)のこどもの定期予防接種について触れます。まず、アルゼンチンのこどもの定期予防接種と日本のこどもの定期予防接種との違いを見てみましょう。

 両国とも定期予防接種として実施している予防接種もありますが、一方の国でしか定期予防接種として実施していない予防接種もあります。表にまとめると、下の表1のとおりです。

表1. こどもの定期予防接種のアルゼンチンと日本との違い
  アルゼンチンのこどもの定期予防接種
実施 実施せず
日本のこどもの定期予防接種 実施 結核(BCG)、
ジフテリア・破傷風百日咳
ポリオ
麻疹風疹
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症
肺炎球菌感染症
B型肝炎、
水痘
ヒトパピローマウイルス16型・18型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌および
6型・11型による尖圭コンジローマ
()
日本脳炎
実施せず 流行性耳下腺炎(ムンプス)
黄熱
インフルエンザ
A型肝炎
アルゼンチン出血熱
ロタウイルスによる感染性胃腸炎
髄膜炎菌感染症
該当なし
: HPVワクチンについて、日本は女子のみ対象、アルゼンチンは2017年1月1日から男女とも対象。

 こどもの定期予防接種として、アルゼンチンで実施されず日本で実施されているものとしては、日本脳炎(JapEnc)があります。反対に、こどもの定期予防接種として、日本で実施されずアルゼンチンで実施されているものとしては、黄熱流行性耳下腺炎(ムンプス)インフルエンザA型肝炎アルゼンチン出血熱ロタウイルスによる感染性胃腸炎髄膜炎菌感染症があります。

 多数のワクチンを混合したワクチン製剤がアルゼンチンでは見られます。たとえば、ジフテリア・破傷風・百日咳のワクチン(DTwP)、B型肝炎のワクチン(HepB)、ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)のワクチン(Hib)を混合したワクチン(DTwP-HepB-Hib:[スペイン語]DPT-HB-Hib)があります。三つのワクチンが混合されたワクチンがあれば、個々のワクチンではそれぞれ1回ずつだと3回の接種が必要なところ、三つのワクチンが混合されたワクチンでは1回の接種で済むことになります。接種回数が少なくなれば、こどもが注射で痛い思いをする回数も少なくなります。また、接種スケジュールの設定も容易になります。

 日本でも混合ワクチンが見られます。ジフテリア・破傷風・百日咳の三種混合ワクチン(DTaP)、麻疹・風疹のMRワクチンなどです。ポリオの不活化ワクチン(IPV)についても、ジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオの、四種混合ワクチン(DTaP/IPV)が2012年11月から新たに使われるようになりました。

アルゼンチンのこどもの定期予防接種スケジュールについて

 アルゼンチンのこどもの定期予防接種の標準的なスケジュール(2017年1月1日から)は、下の表2-1のとおりです。
 HPVワクチンについて、2011年から定期予防接種とされ、女子のみ対象でしたが、2017年1月1日から男女とも対象となりました。2000年以後に生まれた11歳の女子及び2006年以後に生まれた11歳の男子が対象となります。男女いずれとも、6ヶ月間隔での二回接種です。
 4価(A,C.W,Y群)髄膜炎菌結合型ワクチン(MCV4)について、2017年1月1日から定期予防接種とされ、乳幼児期について、生後3,5,15ヶ月の三回接種となります。また、11歳でも一回接種されます。

表2-1. アルゼンチンのこどもの定期予防接種の標準的なスケジュール(2017年1月1日から)
接種時期 予防する感染症 接種するワクチン(英字略語表記等)
出生時 B型肝炎 HepB(1回目)
BCGワクチン BCG(1回接種)
生後2ヶ月 ジフテリア・破傷風百日咳 DTwP(1回目)*
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 Hib(1回目)*
B型肝炎 HepB(2回目)*
ポリオ不活化ワクチン IPV(1回目)
肺炎球菌感染症 PCV13(13価肺炎球菌結合型ワクチン、1回目)
ロタウイルスによる感染性胃腸炎 RV1(1回目)
生後3ヶ月 A,C.W,Y群髄膜炎菌結合型ワクチン MCV4(1回目)
生後4ヶ月 ジフテリア・破傷風百日咳 DTwP(2回目)*
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 Hib(2回目)*
B型肝炎 HepB(3回目)*
ポリオ不活化ワクチン IPV(2回目)
肺炎球菌感染症 PCV13(13価肺炎球菌結合型ワクチン、2回目)
ロタウイルスによる感染性胃腸炎 RV1(2回目)
生後5ヶ月 A,C.W,Y群髄膜炎菌結合型ワクチン MCV4(2回目)
生後6ヶ月 ジフテリア・破傷風百日咳 DTwP(3回目)*
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 Hib(3回目)*
B型肝炎 HepB(4回目)*
2価ポリオ生ワクチン 2vOPV(1回目)
生後6-24ヶ月 インフルエンザ IIV(初シーズンでは4週間以上の間隔で二回接種。次シーズン以後では一回接種。)
生後12ヶ月 肺炎球菌感染症 PCV13(13価肺炎球菌結合型ワクチン、3回目)
麻疹流行性耳下腺炎(ムンプス)風疹 MMR(1回目)
A型肝炎 HepA(1回接種)
生後15ヶ月 A,C.W,Y群髄膜炎菌結合型ワクチン MCV4(3回目)
水痘 Var(1回接種)
生後15-18ヶ月 ジフテリア・破傷風百日咳 DTwP(4回目)**
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 Hib(4回目)**
2価ポリオ生ワクチン 2vOPV (2回目)
生後18ヶ月 黄熱 YFV(1回目)
5-6歳(小学校入学) ジフテリア・破傷風百日咳 DTwP(5回目)
2価ポリオ生ワクチン 2vOPV (3回目)
麻疹流行性耳下腺炎(ムンプス)風疹 MMR(2回目)
11歳 ジフテリア・破傷風百日咳 dTap(1回接種)
黄熱 YFV(2回目。後は、10年毎に1回接種繰り返し。)
A,C.W,Y群髄膜炎菌結合型ワクチン MCV4(1回接種)
11歳(男女とも) ヒトパピローマウイルス
16型・18型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌および
6型・11型による尖圭コンジローマ
HPV(1回目)
HPV(2回目:1回目の6ヶ月後)
流行地で15歳を超える男女 アルゼンチン出血熱 AHFV(1回接種)
16歳 ジフテリア・破傷風 dT(1回接種。後は、10年毎に1回接種繰り返し。)
65歳以上 インフルエンザ IIV(毎年1回接種)
65歳以上 肺炎球菌感染症 PPSV23(23価肺炎球菌ポリサッカライドワクチン、1回接種)
*:アルゼンチンでは、DTwP-HepB-Hib([西語]DTP-HB-Hib)という5種混合ワクチンで接種されます。
**:アルゼンチンでは、DTwP-Hib([西語]DTP-Hib)という4種混合ワクチンで接種されます。あるいは、DTwP-HepB-Hib([西語]DTP-HB-Hib)という5種混合ワクチンで接種されることもあります。

 アルゼンチンのこどもの定期予防接種の標準的なスケジュール(2015年)は、下の表2-2のとおりでした。

表2-2. アルゼンチンのこどもの定期予防接種の標準的なスケジュール(2015年)
接種時期 予防する感染症 接種するワクチン(英字略語表記等)
出生時 B型肝炎 HepB(1回目)
BCGワクチン BCG(1回接種)
生後2ヶ月 ジフテリア・破傷風百日咳 DTwP(1回目)*
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 Hib(1回目)*
B型肝炎 HepB(2回目)*
ポリオ OPV(1回目)
肺炎球菌感染症 PCV13(13価肺炎球菌結合型ワクチン、1回目)
ロタウイルスによる感染性胃腸炎 RV1(1回目)
生後4ヶ月 ジフテリア・破傷風百日咳 DTwP(2回目)*
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 Hib(2回目)*
B型肝炎 HepB(3回目)*
ポリオ OPV(2回目)
肺炎球菌感染症 PCV13(13価肺炎球菌結合型ワクチン、2回目)
ロタウイルスによる感染性胃腸炎 RV1(2回目)
生後6ヶ月 ジフテリア・破傷風百日咳 DTwP(3回目)*
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 Hib(3回目)*
B型肝炎 HepB(4回目)*
ポリオ OPV(3回目)
生後6ヶ月 インフルエンザ IIV(1回目)
生後7ヶ月 インフルエンザ IIV(2回目)
生後12ヶ月 肺炎球菌感染症 PCV13(13価肺炎球菌結合型ワクチン、3回目)
麻疹流行性耳下腺炎(ムンプス)風疹 MMR(1回目)
A型肝炎 HepA(1回接種)
生後15-18ヶ月 ジフテリア・破傷風百日咳 DTwP(4回目)**
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 Hib(4回目)**
ポリオ OPV (4回目)
生後18ヶ月 黄熱 YFV(1回目)
5-6歳 ジフテリア・破傷風百日咳 DTwP(5回目)
ポリオ OPV (5回目)
麻疹流行性耳下腺炎(ムンプス)風疹 MMR(2回目)
11歳 ジフテリア・破傷風百日咳 Tdap(1回接種)
黄熱 YFV(2回目。後は、10年毎に1回接種繰り返し。)
11歳(女子のみ) ヒトパピローマウイルス
16型・18型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌および
6型・11型による尖圭コンジローマ
HPV(1回目:女子のみ)
HPV(2回目:1回目の1-2ヶ月後)
HPV(3回目:1回目の6ヶ月後)
流行地で15歳を超える男女 アルゼンチン出血熱 AHFV(1回接種)
16歳 ジフテリア・破傷風 dT(1回接種。後は、10年毎に1回接種繰り返し。)
65歳以上 インフルエンザ IIV(毎年1回接種)
65歳以上 肺炎球菌感染症 PPSV23(23価肺炎球菌ポリサッカライドワクチン、1回接種)
*:アルゼンチンでは、DTwP-HepB-Hib([西語]DTP-HB-Hib)という5種混合ワクチンで接種されます。
**:アルゼンチンでは、DTwP-Hib([西語]DTP-Hib)という4種混合ワクチンで接種されます。あるいは、DTwP-HepB-Hib([西語]DTP-HB-Hib)という5種混合ワクチンで接種されることもあります。

 アルゼンチンでは、"Candid #1"(C#1)というアルゼンチン出血熱の弱毒生ワクチンがあり、アルゼンチンの定期予防接種の一つとなっています。流行地で15歳を超える男女が接種対象となります。一回接種で筋肉内注射です。15歳未満には接種できないため、アルゼンチン出血熱患者に占める15歳未満の患者の率が相対的に高くなっています。また、アルゼンチン出血熱のワクチンは、アルゼンチン出血熱の流行地がアルゼンチン国内に限定されアルゼンチン以外の国での販売が期待薄であること、危険性の高いウイルスを扱うための設備投資が大きいこと等のため、その開発にはアルゼンチン政府が大きく関わりました。アルゼンチン出血熱に対する"Candid #1"ワクチンの予防効率は95%(95%信頼区間:82-99%)です(参考文献3)。20年間に約257,000人が接種を受けて、その中では、12人の軽症の患者発生が見られたとのことです。なお、アカゲザルを使った動物実験では、遺伝子的にフニンウイルスに近いマチュポウイルスによるボリビア出血熱の予防も示唆されたとのことです。

 複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、複数のワクチン製剤を同じ注射器に吸い上げて混合して用いるようなことをしては、いけません。それぞれのワクチン製剤を別々の注射器に吸い上げて、できるだけ離れた部位に接種します。たとえば、一方のワクチンを右腕に接種したら、もう一方のワクチンを左腕に接種するというように接種します。限られた部位に接種しなければならない場合でも、接種部位は2.5cm以上離します。複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、接種部位が区別できるように、それぞれの接種部位について、接種の記録に、より詳細な記述が必要です。

アルゼンチンにおけるスペイン語のワクチンの略語表記について

 スペイン語はアルゼンチンの公用語です。アルゼンチンにおけるスペイン語のワクチンの略語表記については、下の表3のとおりです。英語のワクチンの略語表記と一致するものもあれば一致しないものもあり、スペイン語(西語)の接種の記録を見るときなどには注意が必要です。

表3. アルゼンチンにおけるスペイン語のワクチンの略語表記
西語略称 西語表記(vacuna contra ---) 日本語表記 英語略称
DT(Doble bacteriana) difteria, tetanos (pediatrico) 細菌二種混合ワクチン(ジフテリア・破傷風;小児用) DT
dT(Doble bacteriana) difteria, tetanos (adulto) 細菌二種混合ワクチン(ジフテリア・破傷風;成人用) dT
DTP(Triple bacteriana celular) difteria, tetanos, Tos convulsa (pediatrico) 細菌三種混合ワクチン(ジフテリア・破傷風百日咳[全菌体];小児用) DTwP
dTpa(Triple bacteriana acelular) difteria, tetanos, Tos convulsa (adulto) 細菌三種混合ワクチン(ジフテリア・破傷風百日咳[無菌体];成人用) Tdap
IPV(Salk) Vacuna inactivada contra la poliomielitis (inyectable) ポリオ(不活化、筋肉内注射;ソーク-ワクチン) IPV
OPV(Sabin) Vacuna oral contra la poliomielitis (atenuados) ポリオ(生、経口;セービン-ワクチン) OPV
Hib Vacuna contra Haemophilus influenzae tipo b ヘモフィルス-インフルエンザb型菌 Hib
HB Hepatitis B B型肝炎 HepB
HA Hepatitis A A型肝炎 HepA
neumococoまたはVCN Vacuna conjugada contra el neumococo 肺炎球菌結合型ワクチン PCV
neumococoまたはVPN Vacuna polisacarida contra el neumococo 肺炎球菌ポリサッカライドワクチン PPSVまたはPPV
VPH Virus papiloma humano ヒト-パピローマウイルス HPV
SRP(Triple viral) sarampion, rubeola, paperas 麻疹風疹流行性耳下腺炎(ムンプス)(ウイルス三種混合) MMR
SR(Doble Viral) sarampion, rubeola 麻疹風疹(ウイルス二種混合) MR
FA Fiebre amarilla 黄熱 YFV
FHA Fiebre hemorragica argentina アルゼンチン出血熱 AHFV
BCG Vacuna BCG(Tuberculosis) BCGワクチン(結核) BCG
Influenza(Gripe) Influenza(Gripe) インフルエンザ IV
penta(DTP-HB-Hib) Vacuna pentavalente 五種混合ワクチン DTwP-Hib-HepB
DTP-Hib(Cuadruple bacteriana) difteria, tetanos, Tos convulsa, Haemophilus influenzae tipo b 細菌四種混合ワクチン(ジフテリア・破傷風百日咳ヘモフィルス-インフルエンザb型菌) DTwP-Hib
Rotavirus Rotavirus ロタウイルス RV

参考文献

  1. WHO vaccine-preventable diseases: monitoring system. 2014 global summary (Immunization schedule selection centre).
     全世界の国々の予防接種スケジュール(WHO):英語。
  2. Ana Ambrosio, Saavedra M.C, Mariani M.A, Gamboa G.S and Maiza A.S, Argentine hemorrhagic fever vaccines; Human vaccines; June 2011; volume 7 issue 6, p. 694-700.
  3. アルゼンチン厚生省(MSAL: Ministerio de Salud)、予防接種. :(スペイン語).
     、Calendario Nacional de Vacunacion(定期予防接種スケジュール). :(スペイン語).
  4. Ray Borrow, Pedro Alarcon, Josefina Carlos, Dominique A. Caugant, Hannah Christensen, Roberto Debbag, Philippe De Wals, Gabriela Echaniz-Aviles, Jamie Findlow, Chris Head, Daphne Holt, Hajime Kamiya, Samir K Saha, Sergey Sidorenko, Muhamed-Kheir Taha, Caroline Trotter, Julio A. Vazquez Moreno, Anne von Gottberg, Marco A. P. Safadi & on behalf of the Global Meningococcal Initiative (2016): The Global Meningococcal Initiative: global epidemiology, the impact of vaccines on meningococcal disease and the importance of herd protection, Expert Review of Vaccines, DOI: 10.1080/14760584.2017.1258308

2013年12月6日初掲載
2015年5月12日増補改訂
2017年1月16日増補改訂

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横浜市衛生研究所 感染症・疫学情報課 - 2013年12月6日作成
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