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大麻(マリファナ)について

大麻(マリファナ)とは ?

 大麻取締法における「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル : Cannabis sativa L. )及びその製品を言います。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品は除かれます。大麻取扱者(都道府県知事の免許)でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならないとされています(大麻取締法第三条)。また、大麻を輸入し、又は輸出すること(大麻研究者が、厚生労働大臣の許可を受けて、大麻を輸入し、又は輸出する場合を除く。)をしてはならないとされています(大麻取締法第四条)。大麻取締法の第二十四条から第二十七条まででは、違反者等に対する懲役・罰金などの罰則が定められています。近年、日本では大麻取締法違反によって検挙される者が増えています。下のグラフをご覧ください。2009年の大麻事犯の年間検挙人員は2920人でこれまでの最大値となりました。また、大麻栽培事案の年間検挙件数も増えていて、2009年の年間大麻栽培事案検挙件数は312件とこれまでの最大値となりました。大麻栽培事案には、アパート・マンション等での自己使用目的での栽培の他、貸しビル・貸家・山中のビニールハウスや露地栽培による営利目的での栽培もあるとのことです(参考文献13)。

日本における大麻事犯の年間検挙人員の推移(1966-2009年)

 なお、日本では薬物事犯全体で見ると、覚せい剤事犯が多く、平成21年(2009年)の覚せい剤事犯の年間検挙人員は 1万1,655人と薬物事犯全体の78.0%を占めます。下の表1のように、平成21年(2009年)の大麻事犯の年間検挙人員は2,920人と薬物事犯全体の19.5%を占め、覚せい剤事犯に次いで多いです。

表1. 平成21年(2009年)薬物事犯別検挙人員(人)

区分検挙人員(人)割合(%)
覚せい剤 11,655 78.0
大麻 2,920 19.5
麻薬及び向精神薬 全体 344 2.3
内、MDMA等合成麻薬 107 0.7
内、コカイン 116 0.8
内、ヘロイン 15 0.1
あへん 28 0.2
14,947 100

(資料:警察庁「平成21年中の薬物・銃器情勢(確定値)」)

 マリファナ( marijuana )は、大麻草の花、茎、種子、葉などを乾燥し切り刻んだ混合物で緑色、灰色や茶色をしています。乾燥したパセリを微塵切りしたように見える場合もあります。紙で巻いてタバコの様にして、あるいはパイプに詰めて、火を点けて煙を吸うことが多いです。葉巻でタバコの替わりにマリファナが使われたりもします。食べ物に混ぜて食べられたり、茶として飲まれたりもします。マリファナの煙は刺激的で独特であり、通常、甘酸っぱい香りがします。マリファナは、もともとはメキシコの言葉ですが、現在では多くの国で通用する呼称となっています。メキシコでは、マリファナは、もともとは安いタバコを意味していました。この安いタバコは大麻を混ぜて吸われることもあり、次第に大麻タバコを意味するようになったようです。なお、成分を濃縮して、茶色や黒や緑色の樹脂状になったものはハシッシュ( hashish )と呼ばれることがあります。ネバネバした黒い液状になったものはハッシュ・オイル( hash oil )、ハシッシュ・オイル( hashish oil )、あるいは液体大麻( liquid cannabis )などと呼ばれます。タバコと混ぜて吸われたりもします。マリファナは、米国では、最も広く乱用されている不法な薬物です。
 マリファナは、摂取される量により作用に違いが見られます。例えば、鎮静作用は少ない量で、幻覚作用は多い量で見られます。
 マリファナなどの大麻の使用によりその主な作用を示す化学物質がTHC( delta-9tetrahydrocannabinol:デルタ・9・テトラヒドロカンナビノール)です。脳には、THCに対する受容体を持っている神経細胞が存在します。この受容体にTHCが結合することで、いわゆる「ハイ( high )な状態」を感じることになると考えられています。THC類似の化学物質(カンナビノイド:cannabinoid)は、大麻中に少なくとも60種類存在しますが、生物学的に作用が認められるのは数種類で、最も強力なのがTHCと考えられています。
 米国で得られるマリファナの効力は昔に比べ大変強くなってきています。マリファナの効力はマリファナの乾燥重量に対するTHCの重量の%で示されます。マリファナに含まれるTHCの量は、1970年台中頃は1%未満だったのですが、2002年には6%以上になっています。なお、THCは大麻草の花、茎、種子、葉などに一様の濃度で分布するわけではありません。通常、売買されるマリファナはTHCの濃度が低い茎や種子を含んでいます。THCが最も高濃度に存在する、大麻草の未受粉の雌株のつぼみを集めた強力なマリファナはシンセミーリャ( sinsemilla )と呼ばれます。シンセミーリャに含まれるTHCの量も、過去20年間の間に6%から13%以上に増加し、33%含むものもあります。なお、シンセミーリャ( sinsemilla )は、スペイン語です。シン( sin )はラテン語の sine に由来し「・・・無しの( without − )」を意味し、セミーリャ( semilla )は「種子( seed )」を意味します。
 THCやマリファナの経口摂取の場合、THCの血液中の濃度が最大になるのは摂取してから1時間から3時間の間です。経口摂取では、30-60分後に影響が出始め、通常4時間程度まで影響が残ります。経口摂取の量が多い場合などには影響が残る時間は長くなります。マリファナを吸った場合には、THCは肺から吸収されて血液中に速やかに入り込み、吸い終わった時にTHCの血液中の濃度が最大になります。吸った場合には、すぐに影響が出始め、通常1-3時間程度まで影響が残ります。吸った量が多い場合などには影響が残る時間は長くなります。THCの血液中の濃度は、通常4-6時間の内に低レベルに下がります。同じ量を経口摂取した場合に比較して、吸った場合には数倍から十倍程度のTHCが吸収されて血液中に入ります。吸収されて体内に入ったTHCの内、80-90%は5日以内に体外に排出されます。約20%は尿中へ、約65%は便中へ排出されます。THCやその代謝物は、マリファナを吸った後、数週間の間は尿中から検出されます。一方、THCは血液中から体内の脂肪組織にも蓄積し、蓄積されたTHCは体外からの摂取が絶たれたようなときに脂肪組織から血液中に徐々に出て来ます。
 なお、米国において、大麻(マリファナ)が違法な薬物である一方で、THCは、化学療法中の癌患者の嘔気を押さえたり、消耗しているエイズ患者の食欲を増進させたりする目的で、治療薬として使われることがあります。
 米国では、マリファナは、全米の50州で作られている他、メキシコ、カナダ、コロンビア、ジャマイカなどの海外で作られたものもあります。1999年に米国民がマリファナの購入のために使ったお金は、106億ドルとされています。2001年の米国では、260万人が新たにマリファナを使ったとされています。1年以上にわたりマリファナを毎日のように使っている人は310万人程度いると推計されています。2002年の統計で、12-17歳でマリファナを使ったことがある人は20.6%、18-25歳では53.8%となっています。12、13歳では、26.0%の人が、16、17歳では、79.0%の人が、マリファナを入手することはたいへん容易であるとしています。喫煙者の方が非喫煙者よりもマリファナを使いやすいとされています。
 WHO(世界保健機関)によれば、全世界において、年間でみると、約1億4700万人が大麻を使っていて、これは世界総人口の2.5%に相当します。世界総人口に対してコカインを使った人が0.2%で、あへんを使った人が0.2%であるのと比較すると、世界でも大麻を使う人は多いです。1960年台から北米、西欧、オーストラリアの先進国で急増したのが目立ちます。日本においても大麻事犯の検挙人数は1960年台から急増しています。大麻は他の違法薬物に比較して開始年齢が低く、若者文化との結びつきも考えられます。若者が大麻の害をよく知って大麻を使わないようにすることが必要です。
 昂揚感、社交性の増加、恥じらい・きまり悪さ・不安等の減少等を求めてマリファナが使われる場合があります。他にも、コカインや覚せい剤では身体的や精神的な働きの活発化を求め、ヘロインでは緊張の緩和を求め、違法な薬物が使われる場合があります。最初は求めたものが得られたように見えるかもしれませんが、次第に使う量や回数が増加し日常生活に深刻な問題が生じ破綻する可能性があります。

大麻(マリファナ)の害

 大麻(マリファナ)の使用は、身体的にも精神的にも以下に示すような種々の害があります。

脳・精神・行動等への害

 マリファナが吸われると、煙の中のTHCが肺から血液中に入り込み、全身を巡ります。血流中のTHCの一部が脳の神経細胞のカンナビノイド(cannabinoid)受容体と呼ばれる受容体と結合し、その神経細胞に影響を与えます。カンナビノイド受容体が多く見られる脳の部位は、喜び、記憶、思考、集中、感覚、時間の認知、協調運動などに関係する部位です。マリファナが吸われると急速に異常が見られるのに対し、経口摂取された場合には摂取後1-2時間でゆっくりと異常が見られます。マリファナの使用による短期的影響は、記憶・学習・思考・問題解決の困難、知覚の変化(形・色・明るさに変化が見られ、時間の経過がゆっくりと感じる)、緊張の緩和、高揚感、多弁、心拍数の増加、食欲の増強等です。不安、パニック、うつ状態、そう状態、とっぴな行動、攻撃的行動、妄想、幻覚(視覚的なものが多い)等が見られる場合もあります。明らかな精神的影響は数時間は残ってもそれ以上は持続しないのが通常ですが、24時間経過しても影響が残り数日でようやく静まる場合もあります。マリファナの長期の使用によっては、他の薬物乱用でも見られるのと似た変化が脳に起こるのではないかと考えられています。マリファナの長期の使用により、自発性の喪失や無感情、成績の低下等が見られることがあります。
 マリファナの依存症となり、禁断症状が見られることがあります。マリファナが断たれてから1-2日以内に禁断症状が現われることがあります。マリファナを少量でも5日間繰り返し使用することで禁断症状が見られることがあります。THCの経口投与により禁断症状は軽くなったり消えたりします(参考文献4)。禁断症状は、短気、不安、抑うつ、攻撃的傾向、不眠等の睡眠の異常、食欲不振、体重減少、悪寒、疲労感等です。禁断症状は、2-3日でピークに達した後、消えていきます。禁断症状の大部分は、マリファナが断たれてから10日までの期間内で認められますが、28日経過しても症状が残る場合もあります(参考文献5)。マリファナへの渇望や禁断症状により、マリファナ常習者はマリファナを止めることが難しいです。
 大麻(マリファナ)の使用は、統合失調症やそううつ病を悪化させると考えられています。

自動車事故

 米国においては、死者が発生した自動車事故において運転者から検出されることのある物質の1位がアルコール、2位がマリファナです。アルコールとマリファナとが検出されることもよく見られ、両者が合わさると顕著に運転能力の低下が見られるとされています。

心臓への害

 マリファナの使用は、血液の酸素運搬能力を低めます。マリファナの使用後1時間以内に心臓発作が起こる危険性は4.8倍に上がるとする研究があります(参考文献11)。
 マリファナは、煙が吸い込まれて数分の内に、心拍数を増加させることがあります。通常、心拍数は1分間に70-80回ですが、さらに20-50回増加させたり、2倍に増加させたりして心臓に負担をかけることがあります。心拍数の増加は3時間持続することもあります。また、眼の血管が拡張し眼が赤く見えることもあります。

肺・気道への害

 マリファナの使用により、口内やのどのヒリヒリと焼ける感じ、ひどい咳を生じることがあります。喫煙者と同様に、咳や痰が多く、肺炎を含めた急性の呼吸器感染症にかかりやすくなります。慢性気管支炎や肺気腫といった慢性閉塞性肺疾患( COPD : chronic obstructive pulmonary disease )が見られることがあります。
 マリファナの煙はベンゾピレン( benzopyrene )などの発癌性物質をタバコの煙より50-70%多く含んでいるとされています。また、マリファナを吸う人は煙を深く吸い込んで息を止め、できるだけ長く煙を肺の中に留めることでTHCを体内に多く取り込もうとする場合がありますが、このような吸い方は普通のタバコの吸い方よりも肺・気道における発癌性物質との接触を長くします。同等の重量のフィルター付きタバコ1本吸うのと比較すると、マリファナを1本吸った場合には、肺に沈着するタールの量は4倍と言われています。吸う頻度が同じであれば、タバコを吸うよりもマリファナを吸う方が、肺癌などの癌になる危険性は高くなる可能性があります。
 なお、THCやTHC類似の化学物質(カンナビノイド:cannabinoid)がタバコの煙に含まれていない点と、ニコチンがマリファナの煙に含まれていない点で、両者の煙は大きく異なります。

 若い成人において、長期間のマリファナの使用は、肺癌になる危険性を増すとの調査結果があります(参考文献12)。

免疫系への害

 カンナビノイド(cannabinoid :CB)受容体には、脳の神経細胞に多く見られるカンナビノイド-1(CB-1)受容体とは別に、免疫に関与する細胞に見られるカンナビノイド-2(CB -2)受容体があるとされています(参考文献7)。THCやTHC類似の化学物質(カンナビノイド:cannabinoid)は、免疫に関与する細胞のCB- 2受容体と結合することで免疫を阻害すると考えられています。その結果、マリファナ常習者は感染症や癌になりやすいと考えられています。マリファナ常習者では頭部や頚部の癌、肺癌が多いとの調査結果があります。
 なお、CB-1受容体、CB-2受容体については、それぞれ、CNR1(cannabinoid receptor 1)、CNR2と呼ばれることもあります。

妊娠・胎児への害

 週に6回以上マリファナを吸う母親から生まれる児については、早産や低出生体重児が見られる傾向があります。喫煙時と同様に母親がマリファナの燃えるときに生ずる一酸化炭素を吸い込むことで胎児が酸素不足となり悪影響を受ける可能性があります。当・横浜市衛生研究所ウェブページの「妊娠と喫煙について」「こどもの受動喫煙について」および「乳幼児突然死症候群(SIDS)について」も参考にしてください(下線部をクリックしてください)。

薬物乱用防止のために・・・

 前項「大麻(マリファナ)の害」で記したように、大麻は安全なクスリではなく、違法で有害な薬物です。大麻の誘惑に負けないようにしましょう。大麻も含んだ薬物乱用防止のために、以下の参考ウェブ・サイトを参考にしてください。

参考ウェブ・サイト

参考文献・・・

  1. NIDA - NIH - U.S. Department of Health & Human Services. ; Marijuana : NIDA INFO FACTS, June 2009. p.1-6.
  2. Luis Alfonso Nunez Dominguez ; Cannabis and Psychiatric Pathology: An Update. ; The Journal of Applied Research, Vol. 4, No. 1, 2004, p.164-172.
  3. CDC ; Urine Testing for Detection of Marijuana: An Advisory. ;MMWR, September 16, 1983/32(36);p. 469-471.
  4. Margaret Haney, Carl L Hart, Suzanne K Vosburg, Jennifer Nasser, Andrew Bennett, Carlos Zubaran and Richard W Foltin ; Marijuana Withdrawal in Humans: Effects of Oral THC or Divalproex ; Neuropsychopharmacology (2004) 29, p.158-170.
  5. Elena M. Kouri, Harrison G. Pope Jr. ; Abstinence symptoms during withdrawal from chronic marijuana use. : Exp Clin Psychopharmacol. 2000 Nov;8(4):p. 483-92.
  6. Budney, A.J.; Hughes, J.R.; Moore, B.A.; Novy, P.L. ;Marijuana abstinence effects in marijuana smokers maintained in their home environment. Archives of General Psychiatry, 2001: 58(10):p. 917-924.
  7. Stephen M. Stahl ; Getting Stoned Without Inhaling: Anandamide Is the Brain's Natural Marijuana ; J Clin Psychiatry. 1998 Nov, Vol 59 No 11, p. 566-567.
  8. NIDA - NIH - U.S. Department of Health & Human Services. ; Marijuana abuse : NIDA research report series, July 2005. p.1-8.
  9. ONDCP( Office of National Drug Control Policy), Executive Office of the President ; Marijuana: ONDCP Drug Policy Information Clearinghouse FACT SHEET ; February 2004, p. 1-8.
  10. 警察庁刑事局組織犯罪対策部薬物銃器対策課;「平成16年中における薬物・銃器情勢」;平成17年1月。
  11. Murray A. Mittleman, Rebecca A. Lewis, Malcolm Maclure, Jane B. Sherwood and James E. Muller; Triggering Myocardial Infarction by Marijuana; Circulation, June 12, 2001;103;p. 2805-2809.
  12. S. Aldington, M. Harwood, B. Cox, M. Weatherall, L. Beckert, A. Hansell, A. Pritchard, G. Robinson and R. Beasley on behalf of the Cannabis and Respiratory Disease Research Group; Cannabis use and risk of lung cancer: a case-control study. Europian Respiratory Journal. 2008; Vo. 31, No. 2: p. 280-286.
  13. 警察庁刑事局組織犯罪対策部薬物銃器対策課;「平成21年中の薬物・銃器情勢(確定値)」;平成22年4月。

2005年1月12日掲載
2005年2月2日改訂
2010年6月4日増補改訂

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横浜市衛生研究所 感染症・疫学情報課 - 2008年4月1日作成 - 2010年6月4日更新
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