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寒念仏供養塔と猫の踊場

早くから住宅地として開けた中田地区

12.寒念仏供養塔(かんねんぶつくようとう)と猫の踊場(おどりば)

踊場の寒念仏供養塔
踊場の寒念仏供養塔

 むかし猫が踊ったという伝説のある踊場の長後街道と岡津・藤沢道が交差する角に、南無阿弥陀佛と刻まれた「寒念仏供養塔」が立っている。地元の有志が史跡として保存しようと、十数年前に石碑保護のために上屋(うわや)を建てた。毎日お参りをする人も多く、供花や供え物も絶えることがない。

 この供養塔建立は元文(げんぶん)二年(一七三七)の十一月である。旧暦の十一月だから、新暦では十二月末か一月の初めである。寒念仏と刻まれているように、寒い中を中田寺(ちゅうでんじ)の住職等五人の僧侶が、戸塚元町から吉田、矢部、鳥ケ谷、戸塚宿の上、中、下町、汲沢大丸、坂下、宮ケ谷の広い地域を、念仏修行して廻った総仕上げに、開鑿(かいさく)されてまだ何年も立っていなかったであろう踊場の坂の頂上に、この供養塔を祀ったものと思われる。

 戸塚宿が成立したのが慶長九年(一六〇四)で、この供養塔建立が元文二年であるから、この間百三十三年のひらきがある。ということは、戸塚宿ができた頃はまだこの踊場の坂を越えて戸塚宿方面へ行くはっきりとした道は整備されていなかったと思われる。

 戦国末期の天正十八年(一五九〇)八月、石巻康敬(いしまきやすたか)が徳川家康に会うために中田から戸塚へ向かった道は、しらゆり公園の庚甲塚から岡津・藤沢道を横断し、鳥が丘から矢部町へ下って倉坪(くらつぼ)を通り、戸塚の元町である今の吉田町に通ずる、この時代の主要道であった「谷矢部(やとやべ)道」を通ったと思われる。この呼び名は今も生きている。

 外様や譜代大名の参勤交代が盛んになるのが寛永の末頃であるが、戸塚宿の助郷を課せられて中田方面から戸塚宿に出向いた道は、恐らくこの谷矢部道を使ったのであろう。

 しかし戸塚宿の本陣や脇本陣が整備され、宿の中心が今の戸塚町に移ってくると、谷矢部道より戸塚宿に近い、この踊場を越える道が開鑿された。それがいつ頃であったのかは供養塔しか知らない。

 現代では、愛玩動物として猫が親しまれているが、昔の人たちは、人間の身近で生活しながらも、犬のようには馴(な)れず、野性的で不可思議な習性を多く持っているため、油断のおけない魔性の動物と考えられていた。猫が踊る不気味な淋しい村の境であったからこそ、供養塔を建てる場所に選ばれたのかも知れない。

 踊場の猫の伝説を紹介すると、

〈その一〉

 戸塚の宿内に、水本屋という醤油屋があった。あるときのこと、沢山ある手拭いが、毎晩一本ずつなくなった。不思議に思った主人は、手拭いに紐を付けて、その先を自分の手に結んで寝た。すると、飼い猫が手拭いをくわえて逃げようとする。主人は飛び起きて後を追ったが、猫が手拭いを何にするのかと不思議であった。
 その後ある晩、踊場付近を水本屋の主人が通りかかると、
「おい、今夜は笛子が来ないぞ」
「そうだ。水本のが見えないな」
「そういやぁ、今夜、熱いオジヤを喰わされたんで、舌をやけどしたといっていたぜ」「そうか、それで来ないんだな」
という猫の話し声が聞こえてきた。びっくりして飛んで帰り家人に聞くと、猫にオジヤを喰わせたという。
 水本屋の主人は、これで手拭いのなくなる訳がわかったといって喜んだそうだ。この踊場では、近所の猫どもが、寄ってたかって毎晩踊っていた。猫は、頭にかぶる手拭いにするために、主人の家の手拭いを持ち出したのである。

〈その二〉

 汲沢町の踊場では、むかし付近の猫が集まって踊りをした。
 あるとき、戸塚四丁目の料理屋「伊勢吉」のみけ猫がひどく遅刻したので、みんなが「どうして遅れたんだ」と間くと「ひどい目にあった。夕飯に熱いお粥(かゆ)を出され、それをうっかり喰って舌を焼いてしまったんだ」と答えたそうである。

〈その三〉

 川上町の徳翁寺(とくおうじ)には、古くから一匹の猫が飼われていた。ところが最近小猫が飼われるようになってからというもの、心中、たいへん面白くなかった。
 そこで毎晩、中田の山に遊びに行って踊った。ところが徳翁寺の猫はいつも袋をかぶって踊っているので、仲間の猫が「なぜ袋をかぶっているのか」と間くと、「自分の飼い主が新人の猫を可愛がり、情を取られたから恥ずかしい」といって、また、互いに化かし合い、踊りあって興をわかしたという。

 小島瓔禮編『神奈川昔話集』および『中和田郷土誌』から引用した。

 

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冊子いずみいまむかしの写真  平成8年11月3日発行
 泉区制十周年記念出版
  いずみ いまむかし
    −泉区小史−  より



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