- トップメニュー|検索

徳右衛門さんとむじな

わしの母親のじい様の兄弟に、徳右衛門さんちゅうて、九十歳も長生きしたじい様がいたそうだ。

その徳右衛門じい様が、まだわしの母親が小さかったところ、よくむじなの話を聞かせてくれたそうだ。 徳右衛門じい様のまだ若かったころの話だ。

家の者が寝静まるころんなると、戸口をトントン、トントンとたたく音がするだ。そんで、しっばらくすると、外から「徳右衛門さん!徳右衛門さん!」ってえ声が聞こえる。

いま時分、こんな夜更けに人が来るわけがねえってんで、ほおっておくと、また、戸口をトントン!トントン!徳右衛門さん!徳右衛門さん!って、はっきり聞こえたんだそうだ。

はてこの夜更けにだれだろうかってんで、いぶかりながら返事しただが、返しがねえんだって・・・。

そんで、あくる晩になると、また、戸口をトントン!トントン!たたく音がして、徳右衛門さん!徳右衛門さん!ってえ、呼ぶ声がきこえる。

そんな晩がいく晩も続いたんだそうだ、しまいにぁ、あんまり呼ぶんでえ、そうっと、起きてってえ、戸口の間からのぜえてみるてと、なあーんと、戸口んところに、古い、でっけえむじながたってただ。そんで、太えしっぽの先でトントンたたいとるところだったそうだ。

徳右衛門さんは、こうして、毎晩、むじなにだまされて、起こされたって話だ。

むじなが人をだますっちゅう話は、よくある話だが、どのむじなでも、人をだますわけじゃあねえんだ。何年もたったような古いむじなだけが、人だますんで、若えのは、人をだまさねえんだよ。

▲ページトップへ