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きつねに化かされた話

昭和のはじめは、この市の沢もまだ人家は少なく、それはさびしいところで、木々におおわれていました。

市の沢の村社、熊野神社のところに宮下という屋号の家がありました。

あるとき、その家の者が病気になり、医者に見てもらうと、「滋養をつけると早くなおりますよ。鳥のガラを食べさせてみなさい。」といわれました。そこで、おやじさんは病人のために鳥のガラを買いに出かけました。

四ツ辻の今あるガソリンスタンドのあたりを、ガラをぶらさげて通りかかると、前を美しい娘さんが歩いていました。前をいく娘さんがあまりにも美しいので、 おやじさんは、ついその娘さんのあとにくっついて歩いていってしまったのです。ボーッとしてその後姿に見ほれて歩くうちに、何かにけつまづいて、ステーン ところんでしまいました。ころんだひょうしに今買ってきたばかりの鳥のガラを何ものかにかっさらわれてしまったのです。

家に帰ってきて、一部始終を話し、鳥のガラも取られてしまったことをうちあけました。すると、「そんなことがあるものか。」っていうんで、だれひとりとも信じてくれませんでした。

この話を伝え聞いた桜屋敷の内田さんの若衆は、血気盛んな若者だったので、「よし、そんじゃ今度はおれが買いに行ってくるべえ!」と、その1日おいたあくる日に、自転車に乗って鳥のガラを買いに出かけました。

その帰り道、例のあたりを通りかかり、坂道を自転車で下りようとすると、今度は、自転車が何かにつまづいて、鳥のガラもろとも放り出されてしまい、また、鳥のガラを取られてしまいました。

こうして、このあたりを行く人が何人もきつねに化かされたということです。だから、市の沢の村の人はこの近くまで来かかると、必ず買ってきた肉や魚を手にしっかりと握りしめて、きつねに化かされないように用心して歩いたものでした。

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